太陽光発電を導入する際、「導入費用」はもっとも重要視するポイントではないでしょうか。設備の購入費用が高額になるほど、投資回収期間が延びるため、可能な限り初期投資は抑えたいところです。
そこで重要となるのが、専門業者から提示される「見積もり」です。今回の記事では、太陽光発電における見積もりについて解説をします。記事内では、見積もりに記載される項目から適正価格を見極めるチェックポイントも具体的に紹介します。現在、太陽光発電の導入を検討中の方は、今回の記事を参考に見積もりを理解できる目を養いましょう。
太陽光発電の見積もりの記載内容とは
太陽光発電の導入を検討する際は、専門業者が提示した見積もりへの理解が重要です。見積もりが正しく把握できなければ、導入費用や予想されるリターンを適切に判断できません。ここでは、太陽光発電の見積もりに記載される項目を解説します。
製品見積もり | 太陽光発電を導入する際、製品の購入費用がコストの大部分を占めます。具体的な製品としては、太陽電池モジュールやパワーコンディショナー、ケーブル、架台といった設備です。各項目の価格は製品の品質や性能、そして販売業者により大きく異なります。 |
工事費 | 太陽光発電設置に関する工事費用が対象です。基本的に人件費と作業難易度、施工業者の価格設定により変動します。 |
その他費用 | 1や2の項目以外に必要となる費用を指します。具体例としては、電力会社への申請費用や設置後の維持管理費などです。 |
保証・サポート料金 | 保証やサポート料金は、製品やサービスの品質を保証するための費用です。 |
値引き費用 | 見積もりで記載された全体の費用から、販売業者が承認した値引き額が記載されます。見積もり内で把握しやすいように、値引き額は基本的に赤字で記載されます。 |
特記事項 | 特記事項には、国からの補助金の有無などの内容が記載されます。補助金の記載がなければ、補助金対象外の可能性もあるため、見積もりを取る際は必ず確認しましょう。 |
太陽光発電の見積もりにおけるチェックポイント5つ
太陽光発電を導入する前に、見積もりをしっかりと確認することが重要です。しかし、見積もりを適切に評価するには専門知識が必要です。当然ですが専門的な知識がないと、見積もりに含まれる多くの項目が適切かどうかを判断できません。ここでは、見積もりを適切に評価するための5つのポイントを紹介します。
1.費用総額が適正かをチェック
太陽光発電の導入を考える際、専門業者から提供される見積もりで、もっとも重要なチェックポイントは「費用総額」です。なぜなら、費用総額は依頼者が最終的に支払う金額であり、投資元本となるためです。また、費用総額は「補助金適用前の金額」も重要なポイントといえます。
補助金の受け取りは、補助金を申請してから数か月かかります。そのため、初期投資として考える場合は補助金適用前の金額も確認しておくべきです。
経済産業省の発表によると、「令和5年度以降の調達価格等に関する意見」では、2022年の太陽光発電システム費用は1kWあたり20万円〜35万円が相場です。この情報をもとに、見積もりの費用総額が「1kWあたり20万円〜35万円(平均26.7万円)」の範囲内かどうかを確認します。相場の金額から大きく乖離している場合は、費用が高い、つまり適正価格よりも高い価格を提示している業者と判断できます。
なお、太陽光発電の設置費用は、住宅用よりも産業用のほうが安くなる傾向にあります。以下に2022年度の設置費用を容量別に紹介します。
出力 | 設置費用相場(1kWあたり) |
10kW以上50kW未満 | 24.7万円 |
50kW以上250kW未満 | 17.3万円 |
250kW以上500kW未満 | 17.0万円 |
500kW以上1,000kW未満 | 16.2万円 |
1,000kW以上 | 18.0万円 |
2.工事費、資材費の内訳が適正かをチェック
太陽光発電の見積もりのなかでは、「工事費や資材費」も重要なポイントです。ここでは、各項目の工事費や資材費などの詳細を一覧で紹介します。
項目 | 詳細 | 価格(1kWあたり) |
太陽光パネル | 効率や耐久性、固定方法や耐荷重などを考慮する必要があります。積雪や台風などの災害が多い地域では、強度や耐久力なども重要です。 | 14万円〜30万円 |
パワーコンディショナー | 太陽光で発電した電力を直流から、交流へ変換する装置です。変換効率が高いものを選ぶと発電効率が向上します。また、自立運転が可能な機能を搭載していれば緊急時にも活用できます。 | 4万円 |
配線ケーブル | 太陽光パネルの配線用ケーブルです。耐久性や用途に応じて最適なものを選ぶとよいです。 | 4,000円〜8,000円 |
接続箱 | 配線をまとめるために必要となる箱です。変換効率の高いものがおすすめです。 | 3万円(1箱あたり) |
発電モニター | 発電量や売電量を遠隔で確認できるシステムです。これにより、発電状況をリアルタイムで把握できます。 | 10万円(1台あたり) |
架台 | 太陽光パネルなどの精密機器を支える土台です。雪や災害の多い地域の場合、耐久性のあるものを選びます。 | 2万円前後 |
上記項目以外にも、設備の組み立てや設置に伴う工事費用も含まれます。最終的に太陽光パネルがもっとも高額になるため、太陽光パネルの価格を比較検討するのが費用を抑える重要なポイントといえます。
3.メーカーの保証内容や保証期間をチェック
太陽光発電の見積もりで重要な項目は、メーカーの保証内容や保証期間です。適切な保証がなければ、設備に故障や不具合が生じた場合に追加出費の可能性があるためです。太陽光パネルは通常、10年や15年といった長期間のメーカー保証が付与されています。しかし、保証内容はパネルに対するもので、システム全体をカバーしていません。
なお、モジュール以外の機器や配線に不具合が生じた場合は、メーカー保証の対象外となるケースが大半です。こうしたメーカーの保証の対象にならない部分をカバーするのが、「施工保証」や「工事保証」です。これらは、施工業者が作業箇所に問題が生じた場合に適用されます。
ここで理解しておくべきポイントとして、施工保証を付帯してくれる業者と、有償でしか提供しない業者が存在することです。そのため、見積もりを取る際は「保証期間がどの程度であるか」、「保証内容は何をカバーしているのか」など、細かい部分まで確認しておきましょう。
4.補助金についての記載があるかをチェック
太陽光発電の見積もりを確認する際は、「補助金」の有無の確認も重要です。補助金とは「特定事業」を行う際の経費の一部を、国や地方自治体が補填する制度です。補助金制度を利用すれば、太陽光発電設備の初期投資額を大幅に削減できます。
しかし、補助金の申請には一定の制限があり、すべての事業者が補助金を受けられるわけではありません。補助金の申請は、専門的な知識や書類作成が必要となるため、専門業者に代行手続きを依頼するのもひとつの方法です。代行依頼をすると、追加費用がかかる可能性もあります。そのため、代行費用がどの程度かかるかも事前に確認しておくとよいでしょう。
5.値引き額が適正かをチェック
値引き額は、見積もりの一番下に記載されるのが一般的で、値引きや出精値引きなどの表現が用いられます。値引き額が数万円から数十万円程度であれば、とくに問題はありません。もしも百万円単位での値引きがされていた場合は、その業者には注意が必要です。
理由は、値引き額が他社よりも明らかに大きい場合、見積もりの根拠が不明確なためです。一例として、太陽光発電設備の製品代が150万円、工事費が20万円であれば、費用総額は170万円、値引き額が30万円であれば最終的な支払額は140万円です。
しかし、製品代と工事費の合計が300万円、値引き額が150万円だった場合は、「なぜ150万円もの値引きが可能なのか」と疑問に感じてしまうでしょう。こうした場合、業者が「お得感」を出すために製品の定価を水増ししているかもしれません。したがって、見積もりを取る際は、見積もり金額の根拠を明確に示してくれる、業者に依頼するのがおすすめです。
太陽光発電の見積もりで、失敗しない為に押さえておくポイント
太陽光発電を導入するには、高額な初期投資が必要です。そのため、施工業者から見積もりをもらう際は、確実に押さえておくポイントがいくつかあります。ここでは、太陽光発電の見積もりで失敗しない具体的なポイントを解説します。
担当者から項目ごとの説明がおこなわれたか
施工業者から太陽光発電の見積もりを受け取る際、窓口となる担当者から詳細な説明があったかどうかも、業者を選ぶうえで重要な要素です。見積もりは複雑な数値や項目が詰まっているため、一目見ただけではすべてを理解するのは困難です。
しかし、担当者によっては見積もりに記載のある項目について、詳しく説明しないケースも多々あります。一方、顧客満足度の高い優良な業者であれば、担当者が項目ごとに丁寧な説明をしてくれるため、見積もりが適正であるかどうかの判断ができます。
見積もりに記載された金額や項目への説明があったかどうかは、業者を選ぶうえで重要な判断材料といえるでしょう。
要望にあった太陽光パネルの提案がされているか
太陽光発電事業を成功させるには、発電効率の高い太陽光パネルが極めて重要です。発電量や収入の大部分はパネルの性能に大きく左右されますが、太陽光パネルの発電量や効率はメーカーや型式により異なります。
たとえば、太陽光発電で得た電力を自家用消費よりも、売電収入をメインで考えている人であれば、発電量の多い太陽光パネルがおすすめです。しかし、発電量の低い製品を施工業者から提案された場合、依頼者の主目的である売電収入が期待できず、費用回収も遠のいてしまいます。
そのため、見積もりを取る際、施工業者が依頼者の求める太陽光パネルを提案しているかどうかは、施工業者を選ぶ際の重要な判断材料です。依頼者の要望に適していないパネルを提案する業者は避け、要望に合った提案をしてくれる業者を選びましょう。
自社の状況がシミュレーションに反映されているか
太陽光発電の導入を検討する際は、自社の状況がシミュレーションに反映されているかどうかの確認も重要です。理由としては、太陽光発電の導入に必要な初期投資やランニングコスト、収益などを予測しながら全体像が明確になるためです。とくに以下の2点は、シミュレーションをするうえで重要視する項目といえます。
- 機器の劣化は想定されているのか
太陽光発電設備の寿命は一般的に20〜30年とされており、設備は経年劣化とともに発電効率も低下していきます。そのため、長期的な運用をシミュレーションするには、劣化による発電量の減少を考慮した損失係数(基本的に0.8〜0.87)が計算に含まれているかどうかが重要です。上記の計算により、シミュレーションが正確かつ信頼があるものかの判断ができます。
- ランニングコストを差し引いても効果はあるか
太陽光発電の導入は初期設置費用だけでなく、メンテナンスなどのランニングコストが必要です。経済産業省の発表によると、ランニングコストは年間5,000円/kWで、10kWのパネルでは年間5万円が相場といわれています。太陽光発電のランニングコストを差し引いたうえで、投資回収できるか、費用対効果が十分であるかを確認しましょう。
自家消費率の計算に問題はないか
自家消費率とは、自家発電の電力を自社や自宅で利用するかどうかの割合を指します。自家消費率は、「自家消費30%・売電70%」が一般的な割合です。しかし、最近は電気料金の高騰や売電価格の下落が進んでいるため、自宅で使う電力を増やしながら余剰分を売電する形が経済的には有利といわれています。
国の補助金や助成金制度を活用できているか
太陽光発電の見積もりをもらう際は、国や自治体からの補助金や助成金が活用できるかどうかも重要な確認ポイントです。各自治体によりますが、補助金制度を上手に活用すれば、初期投資を大幅に削減できます。たとえば、国の補助金制度では、太陽光発電設備と同時に蓄電池などの関連設備の導入を条件に補助金申請ができます。
また、東京都や一部のエリアでは、都道府県と市区町村の補助金を重複して受け取ることが可能なケースもあります。ただし、補助金の予算は自治体によってあらかじめ決まっているため、見積もりを取る際に必ず施工業者に確認しておきましょう。
見積もりは複数の業者から取ったか
太陽光発電設備を導入する際は、複数社からの見積もりが重要です。相見積もりは導入費用の相場を把握可能なだけでなく、各業者のサポートやサービス、保証内容も比較できます。例をあげると、A社の見積もりがB社よりも低い場合、A社がコストを抑えるために必要なサービスや保証を省いている可能性があります。
したがって、複数の業者から見積もりを取ることで、最適な業者を選ぶ判断材料が得られます。
太陽光発電の見積もりに関する注意点
太陽光発電の見積もりを取る際、いくつか注意するべきポイントがあります。それぞれの注意点を詳しく紹介します。
費用対効果も把握しておく
太陽光発電の見積もりをもらう際は、ランニングコストだけでなく「費用対効果」にも注目すべきです。複数社から見積もりを取るときは、「初期投資の安さ」に目を向けがちですが、実際に重要なことは費用対効果と回収年数です。
仮に設置費用が100万円と安価であっても、10年間で得られる回収費用が80万円なら費用対効果はマイナスになります。一方、設置費用が150万円で、10年間で得られる回収費用が200万円なら費用対効果はプラスになります。
費用対効果を見積もるには、設置場所や太陽光パネルの向きなど、細かな条件を設定したうえでのシミュレーションが必要不可欠です。そのため、専門業者から見積もりを取る際は初期費用だけでなく、費用対効果も理解しておく必要があります。
維持管理費もあわせて計算しておく
太陽光発電設備の維持管理費用は、設備の修理費や交換工事費、保険料や保守点検費用など、さまざまな費用が含まれます。そのため、維持管理費を見積もりに含めないと、正しい費用対効果がわかりません。
経済産業省が発表する「令和5年度以降の調達価格等に関する意見」では、太陽光発電の維持管理費用は、年間4,670円/kW程度となっています。
見積もり時点で維持管理費用も先に含めて計算しておくと、売電収入や自家消費で費用面を補填できるかどうかの判断も可能です。
太陽光発電の見積もりでよくある失敗パターン
専門業者から太陽光発電の見積もりを取る際、失敗するケースも数多くあります。ここでは、見積もり取得時の失敗パターンを紹介します。
設置地域や設置条件が見積もりに反映されていなかった
太陽光発電の見積もりでよくある失敗例として、業者のリサーチ不足があげられます。具体的な内容として、設置地域や設置条件が見積もりに反映されていないケースです。設置条件に近しいシミュレーション値でなければ、発電量や月々の収入面などリアルな数字が把握できません。しかし、業者によっては都合のよい条件でシミュレーション値を提示している可能性もあります。
以上を踏まえ、費用対効果を間違わないためにも、設置場所や条件に合わせたシミュレーション値は必ず提出してもらいましょう。
自社の営業スタイルと経済メリットがあっていなかった
太陽光発電の見積もりでよくある失敗例が、自社の営業スタイルと経済メリットが一致していない点です。太陽光発電の見積もり金額の高低を判断する前に、設置後にどれだけの経済的なメリットが得られるかどうかは非常に重要です。なぜなら、適切な投資計画やプランニングによって、ビジネススタイルに適した運用をしなければ投資回収ができないためです。
たとえば、主な稼働時間が昼間であれば、自家消費を重視した太陽光発電により、高騰しがちな昼間の電気代をまかなえます。そのため、費用対効果は高いと感じるでしょう。一方、稼働時間が夜間の場合は、電気代が昼間よりも安くすむため、投資額における費用対効果は低いと感じるかもしれません。
以上のことから、見積もりをとる際は、自社の営業スタイルと経済的メリットを比較しながら判断するとよいでしょう。
太陽光発電の見積もりは知識が豊富な業者に任せよう
太陽光発電における専門的な知識を持つ業者であれば、適切な設備の選択や最適な設置方法などをアドバイスしてくれます。具体的には、太陽光発電の設置場所やパネルの向きなどを踏まえた詳細なシミュレーションを提供してくれるでしょう。
このように、優良な施工業者に見積もりをとることで、事前に太陽光発電設備の効率や経済性が理解できるため、結果的に投資リスクの回避につながる可能性が高まります。
まとめ
本記事では、太陽光発電設備の見積もりに関する注意点を解説しました。見積もり取得時のポイント、失敗しないために押さえておくべき項目なども紹介しています。太陽光発電設備の導入を検討中の方は、今回の記事を参考にご自身の投資スタイルに適した業者から見積もりを依頼するとよいでしょう。