「火力発電のメリット・デメリットって何?」「火力発電が環境に与える影響を知りたい」などの疑問を抱えている人もいるのではないでしょうか?
この記事では、火力発電の仕組みやメリット・デメリット、日本の現状について解説していきます。デメリットでは、火力発電が地球に与える影響について説明します。火力発電について理解を深めたい方は、ぜひ参考にしてください。
火力発電の仕組み
火力発電は、燃料を燃やした熱で蒸気を発生させ、タービンを回転させます。このタービンは発電機につながっており、タービンが回転することで電気が発生する仕組みです。また、蒸気は復水器によって水に戻り、再利用できるようになっています。
この蒸気によって発電する方法を「汽力発電」と呼び、それ以外にもガスでタービンを回転させる「ガスタービン発電」、この2つの発電方法を組み合わせた「コンバインドサイクル発電」があります。
火力発電のメリット
火力発電のメリットは以下の4つです。
- 電力を安定して供給できる
- 出力を調整できる
- エネルギー変換効率が高い
- 設置場所の制約がない
それぞれ具体的に説明していきます。
電力を安定して供給できる
火力発電は、天候などの外部環境に左右されず、安定して電力を供給できます。電気は貯蓄することができないため、いつでも供給できる火力発電は欠かせないエネルギー源です。
安定供給できる発電方法には、他にも原子力発電もあります。しかし、福島第一原子力発電所事故によって原子力発電所の安全性が見直されており、稼働が縮小している状況です。そのため、日本の発電量における火力発電の割合は約8割と高くなっています。
出力を調整できる
火力発電は安定して供給できるだけでなく、出力を調整できることもメリットです。電気の需要は夏と冬に高くなりますが、その需要に応じて発電量を調整できます。
再生可能エネルギーとして注目されている太陽光発電や風力発電は、発電量を調整することができません。しかし、火力発電を利用すれば、電気のロスを減らしたり、不足を防いだりできるのです。
エネルギー変換効率が高い
火力発電は、エネルギー変換効率が高いエネルギー源の一つです。エネルギー変換効率とは、発生させたエネルギーを電気に交換できる割合であり、変換効率が高いほど効率的に発電できていることを意味します。
火力発電のエネルギー変換効率は55%です。対して、風力発電は25%、太陽光発電は15〜20%となっています。無駄なく発電できる点も、火力発電のメリットの一つです。
参考:再生可能エネルギーへの取組み 水力発電の概要|関西電力
設置場所の制約がない
火力発電には、設置場所の制約がないメリットもあります。例えば、水力発電や風力発電であれば広大な土地が必要であり、天候などの条件も加味しなければなりません。
しかし火力発電であれば、比較的狭い土地に建設できます。また、天候などの条件を考慮する必要がなく、土地さえあれば建設することができるのです。
火力発電のデメリット
利便性の高い火力発電ですが、一方でデメリットもあります。
- 環境に与える影響が大きい
- 燃料を輸入に頼っている
- 燃料が枯渇する恐れがある
それぞれのデメリットについて見ていきましょう。
環境に与える影響が大きい
火力発電は、発電時に燃料を燃やす過程で、大量のCO2を排出します。そのため、環境に与える影響が大きく、地球温暖化を促進させる一因となっているのです。
世界では、パリ協定で定められた目標を達成するために、温室効果ガスの排出量削減に取り組んでいます。このまま火力発電を利用し続けると、この目標を達成することは難しいでしょう。そのため、火力発電を再生可能エネルギーへと転換するための取り組みが各国で行われています。
燃料を輸入に頼っている
火力発電の燃料である化石燃料は、国内で採ることができず、海外からの輸入に頼っています。そのため、国際情勢の影響を受けて、価格が高騰する可能性があることも大きなデメリットです。
また、もし化石燃料を輸入できなくなってしまったら、エネルギーが不足する懸念もあります。対策として、化石燃料の調達先を分散させたり、その他のエネルギーの割合を高めたりすることが挙げられます。
燃料が枯渇する恐れがある
化石燃料は有限であり、枯渇する恐れがあることもデメリットとして挙げられます。具体的には、石油と天然ガスは50年、石炭は130年ほどで枯渇する予測です。
そのため、発電効率が高い燃焼方法を確立したり、他のエネルギーの普及率を高めたりすることが重要になります。化石燃料を使用し続ける限り、何かしらの対策を施さなければなりません。
日本の火力発電の現状
国内の発電量における火力発電の割合は高く、化石燃料に大きく依存している状況です。東日本大震災の前年は81.2%だったものの、事故の発生によって原子力発電が停止し、2017年には87.4%まで増加しました。
また、2018年の化石燃料の海外依存度は下記の通りであり、ほとんどを海外からの輸入に頼っています。
- 石油:99.7%
- 液化天然ガス:97.5%
- 石炭:99.3%
石油は中東、石炭はオーストラリアからの輸入に依存しており、調達先を分散することが求められています。
さらに、カーボンニュートラルの実現に向けて温室効果ガスの排出量削減が叫ばれる中で、火力発電の利用を減らしていかなければなりません。このような背景から、政府は再生可能エネルギーの割合を高めて、火力発電の割合を減らすことを掲げています。
参考:2019—日本が抱えているエネルギー問題(前編)|経済産業省
まとめ
この記事では、火力発電のメリット・デメリットをはじめとして、仕組みや日本の状況について解説しました。
火力発電はエネルギー供給が安定かつ調整できるメリットがある一方で、CO2を排出するので環境への影響が大きいです。そのため、火力発電の割合を減らしていくことが重要です。
再生可能エネルギーを上手く活用して、火力発電に関連する問題を解消することが求められています。