太陽光発電は壊れにくい機器のため、メンテナンスは必要ないと思っている方はいませんか。実際は、太陽光発電のメンテナンスを怠ると故障や重大な事故につながる恐れがあります。また、太陽光発電のメンテナンスはどのように行うべきなのか、どれくらいの頻度で行えばよいのか、と疑問に思っている方も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、太陽光発電のメンテナンスがなぜ必要なのかを詳しく解説するとともに、メンテナンスの内容や費用の相場について詳しく紹介します。
太陽光発電のメンテナンスが必要な理由
太陽光発電のメンテナンスが必要な理由は以下の4つです。
- 発電量の低下を防ぐため
- 故障や不調を事前に防ぐため
- 第三者への損害を防ぐため
- 法律で義務化されているため
それぞれの理由について、詳しく解説します。
発電量の低下を防ぐため
太陽光発電は経年劣化により発電性能が低下するため、定期的なメンテナンスが必要です。「太陽光モジュール」と「パワーコンディショナー」は、とくに注意が必要です。この部分が環境の影響を受けて劣化したり、フィルターの目詰まりを起こしたりすると、性能が低下して本来の発電量が得られなくなります。このような事態を発生させないためにも、メンテナンスを定期的に行うことは重要です。
故障や不調を事前に防ぐため
太陽光発電のメンテナンスを定期的に行うことで、故障や不調の早期発見につながります。太陽光パネルは、屋外に設置されています。そのため、常に風雨にさらされた状態であるのはもちろんのこと、気候の変化の影響を受けるほか、鳥の糞や花粉などで汚れやすいのが特徴です。
このような汚れや傷を放っておくと、部品が腐食して発電できなくなったり、最悪の場合は発火や落下といった大事故につながったりするおそれもあります。太陽光発電を安全に稼働させるためにも、定期的なメンテナンスを実施しましょう。
第三者への損害を防ぐため
太陽光発電のメンテナンスを怠ると、第三者へ損害を与えるリスクが高くなる恐れがあります。たとえば、固定器具の破損に気づかずにいると、パネルや部材が風で飛んでしまい落下して、近隣の建物や通行人に直撃する可能性があります。第三者へ損害を与えてしまうと、損害賠償責任が生じるだけでなく、最悪の場合は命にかかわる事故につながる恐れもあります。
法律で義務化されているため
太陽光発電のメンテナンスは、電気事業法および改正FIT法により義務化されています。FITの発電所はもちろん、非FITの発電所も義務化の対象になるため注意が必要です。義務化の対象になっているにもかかわらず、メンテナンスを行っていない場合はFIT認定取り消しなどのペナルティを課せられることがあるでしょう。なお、義務化されているメンテナンスの内容は発電所の設備内容や環境に応じて異なります。
メンテナンスについて詳しく知りたい方は、下記の記事をご覧ください。
太陽光パネルの点検の義務化とは?違反した場合の罰則についても解説!
太陽光発電のメンテナンスの頻度
太陽光発電のメンテナンスの頻度は、「〇年に1回」というように明確なガイドラインが設けられているわけではありません。日本電機工業会・太陽光発電協会の「太陽光発電システム保守点検ガイドライン」によると、メンテナンスの頻度はシステムの種類や契約内容、メーカーの保証内容などによって異なるとされています。
そのため、最適な頻度はどれくらいとは一概にいえません。しかし、設置後1年で初期不良の点検を行うのが一般的です。それ以降は、日常点検を行いつつ、4年に1度メンテナンスを行うことが一つの目安です。
また、太陽光発電の部品の保証は10年で切れることが多いため、9年目のメンテナンスは必ず行いましょう。出力保証の多くは20年目で切れるため、その前に故障箇所がないか、劣化具合はどうかをしっかりチェックしておくとよいでしょう。
落雷や積雪の多い地域、海の近くで潮風による塩害が多い地域に太陽光発電を設置している場合は、メンテナンスの頻度をさらに高めておくと安心です。
太陽光発電のメンテナンスの内容
太陽光発電のメンテナンスの主な内容は以下の3つです。
- 目視での点検
- 測定機器による数値測定
- 太陽光パネル等の清掃
それぞれについて、詳しく解説します。
目視での点検
日常点検では、目視で異常や不具合がないかをチェックします。まずは、パワーコンディショナーを点検して本体部分の汚れ、異臭や異音、振動などがないかを確認しましょう。さらに、本体の汚れや換気フィルターの目詰まりがないかどうかも確認します。モジュールは梯子や足場を使用して、汚れや破損、傷がないかを点検します。ケーブルや接続箱は、腐食や破損がないかを目視で確認します。
測定機器による数値測定
目視で点検できない項目は、測定機器を使用して数値をチェックします。使用する主な測定機器を以下の表にまとめました。
主な測定機器と測定箇所および測定項目
測定機器 | 測定箇所 | 測定内容 |
赤外線サーモグラフィー | 太陽光パネル | ホットスポット(※)と呼ばれる発熱異常がないかどうかをチェック |
絶縁抵抗計 | 太陽光パネルとケーブル | 太陽光パネルとケーブルの絶縁抵抗値を計測し、電流が規定値以上に通電していないかをチェック |
モニター | 太陽光パネル | 太陽光パネルの1日の発電量をチェックし、性能通り発電できているかを確認 |
接地抵抗計 | 接地抵抗(アース) | 接地に異常が起こると感電や火災の原因となるため、接地抵抗に不具合がないかをチェック |
※ホットスポットとは鳥の糞や落ち葉、雑草の影などが原因で太陽光パネルが局所的に発熱し、高温になる不具合のことです。
太陽光パネル等の清掃
太陽光パネルの表面に付着した汚れや鳥の糞を取り除き、部品についた砂埃を洗浄する清掃作業も重要なメンテナンスのひとつです。太陽光パネルを洗浄する際は、高圧洗浄機できれいにする場合もありますが、メーカーによっては使用を薦めていないケースがあります。事前に高圧洗浄機を使用可能かどうか確認しておきましょう。
太陽光パネルの洗浄は、梅雨が明けて暑くなる前の時期に行うとよいとされています。1月から3月にかけての花粉や黄砂が多い時期に掃除をしても、すぐに汚れてしまうため避けたほうがよいでしょう。また、太陽光パネルは雨である程度の汚れは落ちるように作られているため、梅雨の時期を挟めば汚れもさほど付いておらず、掃除も幾分かは楽になります。
このほか、夏場は急激に成長した雑草が太陽光パネルに影を作り、ホットスポットを引き起こす可能性があるため、除草作業も定期的に行いましょう。
太陽光発電のメンテナンス費用
太陽光発電のメンテナンス費用は、発電所の規模により異なります。10kW未満の住宅用太陽光発電の場合、メンテナンス費用は1回あたり2~3万円程度が相場です。仮に4年に1回メンテナンスを行い料金が2万円とした場合は、メンテナンスにかかる年間のランニングコストは5,000円です。
50kW未満の低圧太陽光発電所の場合、1回のメンテナンスにかかる費用の相場は10万円~15万円前後です。費用は業者にどこまで依頼するか、また各社がどこまで対応してくれるかによっても異なります。
50kW以上2000kW未満の高圧発電所の場合、規模とメンテナンスの内容によって費用が変わります。たとえば、1MWの高圧発電所の場合は年間50万円~100万円程度が相場です。2MWの高圧発電所になると、メンテナンス費用は年間200万円以上になるでしょう。
また、高圧発電所の場合は電気事業法上「保安規程を定めて管轄の産業保安監督部等へと届け出る義務」があります。そして、メンテナンスの頻度は届出を出した保安規定に従う必要があります。一般的には、6か月に1回以上の頻度でメンテナンスを行うことが多いです。
太陽光発電のメンテナンスで故障が見つかった場合の修理費用
太陽光発電のメンテナンスで何らかの不具合や故障が見つかった場合は、それらの修理費用がかかります。保証期間や保証内容は、故障した箇所により異なりますが、メーカーの保証期間内であれば無償での修理が可能な場合が多いです。
もし出力がメーカーの定めている水準を下回った場合は、出力保証としてモジュールの修理および交換をしてもらえます。しかし、周辺機器は保証の対象外となるため気をつけましょう。システム機器の場合は、パワーコンディショナーをはじめとした周辺機器も保証の対象です。参考までに、住宅用太陽光発電の修理にかかる費用の相場をいくつかご紹介しましょう。
- パワーコンディショナーの修理・交換
工事費を含めて20万円〜40万円ほど
- 太陽電池モジュールの修理・交換
1枚7万円~
- フェンス・柵設置
1mあたり7千円~(フェンスの種類および門扉や基礎を設置するかどうかなどで価格は異なる)
メーカーの保証内容をしっかり確認し、どの箇所にどれくらいの期間の保証が付いているかをしっかり把握しておきましょう。
太陽光発電のメンテナンスはセルフでできる?
ここからは、太陽光発電はセルフメンテナンスができるのか?業者に依頼するべきか?について解説します。
基本的には業者に依頼する
太陽光発電のメンテナンスは、基本的には業者に依頼しましょう。とくに電気系統を触る作業や電気点検は、知識のない人が行うと感電のリスクがあるため非常に危険です。また、屋根の上に設置された太陽光パネルを点検する場合は転落の恐れがあり、不慣れな人が登ると事故につながる可能性があるでしょう。
さらに、機器を触ってしまったことで、故障や破損につながる場合があります。太陽光発電の保証は、家電製品と同じく「通常の使い方をしていたのに不具合や故障が起きた場合」に適用されます。そのため、人為的な故障は保証の対象外になり、修理に高額な費用がかかる可能性があるでしょう。
また、太陽光発電はメンテナンスに専門的な知識が必要な箇所が多数あります。そのため、資格のある専門技術者や専門技術者を有する会社にメンテナンスを頼むことが重要です。メンテナンスの認定資格は以下の2つです。
- 太陽光発電メンテナンス技士
一般社団法人太陽光発電安全保安協会(JPMA)が付与している資格。資格認定講座、および技能講習会を受講したうえで、テストに合格すると資格を取得できます。
- 太陽光発電検査協会(PIA)の技術認定
PIAの講習や研修を修了すると交付される資格です。
資格を有する技術者の在籍の有無を必ず確認し、業者に依頼しましょう。
セルフでできるメンテナンス内容
太陽光発電のメンテナンスは業者に依頼することが望ましいとはいえ、セルフでできる箇所もあります。業者に頼む部分とセルフで行う部分を上手に分けることで、メンテナンス費用を節約できるでしょう。セルフでできるメンテナンスの主な内容は以下のとおりです。
- 日常点検
太陽光パネルの周辺に影になるものはないか、汚れや腐食、破損している部分はないか、異音や異臭はないかなどを日常的に目視で点検する作業です。
- 自然災害時の確認
台風や地震、豪雨といった自然災害の前後に異常がないか、また、異常が起こりそうなところがないかを目視で確認します。
- 草刈り
設備の周辺に生えている雑草を定期的に除草する作業です。
目視確認はセルフで行い、異常や不具合が見つかれば業者に依頼する、という流れにしておくと大きな故障が見つかる前に対処できるでしょう。なお、草刈りも基本的にはセルフで行えるメンテナンスではありますが、電気系統の近くは非常に危険です。また、誤って配線を切ってしまう恐れもあるため、危険な箇所は業者に依頼しましょう。
まとめ
太陽光発電は一般的に故障しにくい機器であるとされているため、メンテナンスを怠ってしまいがちです。しかし、メンテナンスをせずに故障やトラブルが発生した場合は、修理費が高額になってしまう可能性があります。大きな故障などが起きないように、日々のメンテナンスをしっかり行うことが大切です。また、誤った方法でメンテナンスをしたり、違法な業者にメンテナンスや修理を依頼し高額な費用を請求されたりしないためにも、メンテナンスの方法や費用の相場をしっかり把握しておきましょう。