太陽光発電は、再生可能エネルギーとしての役割だけでなく、経済的な利益を生む「投資」です。経済的なメリットがあるとはいえ、太陽光発電にはさまざまな税金が発生する可能性があります。太陽光発電を始めるにあたり、この「税金」に関してはしっかり理解しておく必要があります。
この記事では、太陽光発電に関連する税金の種類をはじめ、課税のケースや税金対策などについて分かりやすく解説します。
太陽光発電でかかる税金の種類とは
太陽光発電にかかる税金の種類は、運用と収益が複雑なので多岐にわたります。今回は、主に影響の大きい以下の3つの税金について解説します。
- 所得税・法人税
- 固定資産税
- 消費税
以下でそれぞれの種類を解説します。
所得税・法人税
1つ目は、所得税・法人税です。太陽光発電からの収益が個人の所得として発生した場合、所得税が課されます。事業者が太陽光発電を通じて利益を得る場合、それは法人税の対象となります。
具体的には、売電によって得られる収入が事業所得として扱われ、必要な経費を差し引いた後の純利益に対して課税されます。太陽光発電を行う個人や法人は、売電収入に対して適切な申告と納税が求められます。
固定資産税
固定資産税とは、土地や建物、償却資産などの不動産や事業用資産に課される地方税です。固定資産税は所有者が市町村に対して支払う義務があり、その資産の維持に関連する公共サービスを提供するために使用されます。
具体的には、
- 上下水道の維持
- 公共インフラの整備
- 地域の安全保障
など、住民の生活品質を支える多くのサービスに充てられます。
太陽光発電システムは、設置の形態によって固定資産税の課税対象となりうる可能性があります。例えば、設備が建物の構造部分と一体化している場合(屋根に組み込まれた太陽光パネル)は、建物の一部と見なされ固定資産税が課されます。
一方で、取り外し可能な設備や独立して設置されたパネルは、固定資産として扱われない場合もあります。太陽光発電が事業として運用される場合、太陽光発電システムは事業用償却資産として扱われるため、適切な申告が必要となります。
固定資産税は、資産の価値や地域により異なる税率が適用されます。そのため、太陽光発電設備の投資を検討する際は、税金の側面からも熟考する必要があります。また、固定資産税の支払いは通常、資産が所在する市町村に対して行われます。しかし、東京都23区のような特例地域では都税として納税されることもあります。
消費税
太陽光発電システムの購入、および設置工事にかかる費用には消費税が適用されます。さらに、事業者が太陽光発電を通じて電力を販売する場合、その売上に対しても消費税が課税されます。このため、売電事業者は消費税の適切な申告と納税が必要です。消費税は売上金額に基づいて計算され、売電事業者が消費税を免除されることは通常ありません。
太陽光発電の課税の対象
太陽光発電設備は、設置目的と規模により課税の対象が変わります。具体的には、太陽光発電の出力が「10kW未満」の場合と「10kW以上」の場合で課税の扱いは大きく異なります。
「10kW未満」の場合と「10kW以上」のそれぞれの課税は以下の通りです。
出力10kW未満 住宅用太陽光発電設備の課税 | 出力10kW以上 産業用太陽光発電設備の課税 |
住宅用太陽光発電設備は、主に個人の自宅で使用されるもので、個人の生活用資産として分類されます。そのため一般的には、住宅用太陽光発電設備には課税されません。ただし、住宅用でも出力が10kWを超える場合は、その設備は産業用と同じ分類になり、事業用資産としての課税対象になります。全量売電を行っている場合でも売電事業者とみなされ、償却資産の申告が必要になります。 | 産業用太陽光発電設備は、収益を目的として設置されることが多いため、事業用資産として扱われます。そのため、全量売電や余剰売電に関わらず、設備は課税対象となります。産業用太陽光発電では、発電効率と経済性が重視されるため、これらの設備から得られる収入に対して所得税や法人税が課されます。 |
所得税・法人税がかかるケース
太陽光発電で得た収入に対して、所得税・法人税の課税が発生するのは特定の条件がある場合のみです。主に、太陽光発電による電力を売却して得る収益がある場合、所得税・法人税の対象となります。具体的には、以下のような状況で所得税・法人税が発生します。
太陽光発電による売電収入がある場合 | 太陽光発電で得た電力を売って発生した利益は、所得税の対象となります。この収入は「雑所得」として分類され、年間20万円を超えると課税対象になります。 |
他の雑所得との合計が20万円を超える場合 | 太陽光発電で出た利益が20万円未満でも、他の雑所得と合算して年間20万円を超えた場合、所得税が課税されます。特に個人事業主やフリーランスは、このケースが当てはまります。 |
売電収入が年間20万円を超える場合 | 年間20万円を超える収入は所得税の申告が必要となり、課税所得として計算されます。ただし、年間20万円を超えない限り、所得税は発生しませんが、住民税には影響があります。 |
固定資産税がかかるケース
固定資産税は、太陽光発電設備にも適用される場合がありますが、その課税対象となるかどうかは、設備の種類や設置方法により異なります。以下で具体的な条件を詳しく解説します。
▶️固定資産税が課税されるケース
- 屋根と一体型の設備
太陽光パネルが屋根と一体化している場合、家屋の一部とみなされ、固定資産税が課税されます。パネルが建物の構造に組み込まれていて、取り外しができない状態であるため、固定資産として判断されるためです。
- 大規模な設備
10kWを超える発電設備は、事業用として扱われることが多く、固定資産税の課税の対象となります。設備の規模や事業性が大きく影響しているといえるでしょう。
▶️固定資産税が課税されないケース
- 取り外し可能な設備
太陽光発電設備が取り外し可能な場合は、固定資産とみなされません。例えば、架台に設置されているものであれば、固定資産税の課税対象外となる可能性が高いです。移動や撤去が可能であるため、固定資産としての要件を満たさないものとして取り扱われます。
- 小規模な住宅用設備
10kW未満の家庭用太陽光発電設備の場合、とくに新築住宅で屋根一体型以外の設置であれば、固定資産税が非課税となるケースがあります。地方自治体による規制により異なるため、設置前に確認しましょう。
太陽光発電で税金対策としてできること
太陽光発電で税金対策としてできることは、主に以下の2つです。
- 減価償却による負担軽減をする
- 経費として計上できるものはする
以下で詳しく説明します。
所減価償却による負担軽減をする
太陽光発電の税金対策の1つは、減価償却による負担軽減をすることです。太陽光発電設備の導入において、減価償却費の計上は法人だけでなく、個人にも適用される重要な節税戦略といえます。
設備は初期投資後、法定耐用年数である17年間にわたり、減価償却費として経費に配分されます。この方法により、固定資産税の負担を有効に管理することが可能です。なお、減価償却には主に定額法と定率法の2つの方法があります。
定額法 | 定率法 |
毎年一定の割合(取得価格の5.9%)を経費として計上します。これにより、毎年の税負担が一定となり、予算計画が立てやすくなります。 | 初年度には取得価格の11.8%を計上し、続く年度は前年度の償却後の残存価格の11.8%を計上します。この方法では初期の税負担を大幅に軽減できるため、特に大型投資での利用が推奨されます。 これらの減価償却方法は、太陽光発電設備の経済的な負担を軽減し、長期にわたって安定した設備運用を支援します。とくに、新規設備の導入を検討している企業や個人にとって、これらの知識は財務戦略の基盤となり得ます。 |
経費として計上できるものはする
2つ目の節税対策は、経費として計上できるものはすることです。主に、経費として計上できるものは、以下のようなものがあります。
- 太陽光発電システム本体にかかる費用
- ローンを組んだ場合の利息
- 土地の賃貸料
- 保険料
- メンテナンス費用
それぞれの費用を解説します。
太陽光発電システム本体にかかる費用
太陽光発電システム本体を購入した費用は、経費として計上できます。太陽光発電システムの費用は莫大なため、1度に経費として計上することはできません。基本は、減価償却費として計上します。太陽光発電システム設備の法定耐用年数は「17年間」のため、17分割した費用を1年度分の経費にできます。
ローンを組んだ場合の利息
太陽光発電システムを購入するためにローンを組んだ場合、「支払う利息」も経費として認められています。
土地の賃貸料
太陽光発電システムの土地は、賃貸と購入の2つの選択肢があります。土地を購入する場合は初期費用と固定資産税がかかりますが、賃貸の場合は初期費用を抑えつつ、賃貸料を経費に計上できます。
ただし、賃貸にも購入にもそれぞれのメリット・デメリットがあります。財務状況やリスク許容度、未来の市場動向に対する見通しなどによりベストな選択をしてください。
保険料
保険料も経費として計上できます。保険は、太陽光発電システム稼働に伴うリスクを見越して、安定した運営を続けるために必要なものです。適切な保険を選ぶことで予期せぬ事態から事業を守り、経済的な安定を確保できます。保険には、以下のようなものがあります。
- 出力保証保険
- 賠償責任保険
- 火災・自然災害保険
それぞれの状況に合った保険を導入し、経費として計上しましょう。
メンテナンス費用
太陽光発電システムを維持するには、定期的なメンテナンスが必要です。このメンテナンス費用も経費として計上できます。太陽光発電システムに必要な具体的なメンテナンスは以下の通りです。
目視検査 | パネルの表面の汚れや損傷、サビや破損、固定具やボルトの緩みがないかなどをチェックします。基本的な点検で、異常があった場合は修理や清掃が必要です。 |
清掃作業 | パネル表面の汚れやほこりを定期的に清掃し、発電効率の低下を防ぎます。とくに枝葉や鳥の糞などが積もっている場合は、念入りに清掃します。 |
電気的点検 | インバーター、接続箱、ケーブルなどの接続状態を確認し、断線や漏電がないかを検査します。電圧や電流の測定を行い、システムが正常に動作しているかも確認します。 |
システムのパフォーマンスチェック | 発電量を記録し、予測される発電量と比較します。パフォーマンスが期待値通りでない場合に原因を特定しやすくなります。 |
安全確認 | システム全体の安全性を確認し、とくに屋根や設置場所の構造が安全であることを確認します。設置場所の耐荷重が太陽光パネルの重量に適しているかの確認も含まれます。 |
次に、メンテナンス費用の4つの種類をご紹介します。
業者によるメンテナンス費用 | 定期的な点検や修理に関わる費用は、メンテナンス契約に基づき経費計上が可能です。 |
自己メンテナンスの費用 | 自身でメンテナンスを行う場合、必要な機器の購入費用やメンテナンス技師の資格取得費も経費に含められます。ただし、資格を取得しても実際に自分でメンテナンスを行わず業者に依頼する場合は、その資格取得費は経費に計上できません。 |
機器購入費 | メンテナンスに必要な機器購入は、10万円未満であれば全額、20万円未満なら3年間で均等割りして経費計上が可能です。青色申告者は30万円未満の機器も全額計上できますが、年間限度は300万円です。 |
その他の経費 | メンテナンス作業中に使用する水道代、浄剤、高圧洗浄機、草刈り機なども経費として認められます。作業着や業者への飲食代、差し入れなども計上可能です。 |
以上の費用を適切に管理し計上することで、太陽光発電投資のコスト効率を向上できます。法人・個人事業主に特化した「太陽光設備の減価償却費の計算方法」について知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
太陽光発電を活用した節税とは|法人・個人事業主向けに方法や計算方法を紹介
まとめ
太陽光発電に関連する税金は、主に所得税や固定資産税、消費税です。課税の対象は設置目的と規模によって変わり、「10kW未満」「10kW以上」の場合で取り扱いが大きく異なることも分かりました。規模や収入の大きさにより、課税される税金は大きく膨れ上がってしまいます。適切な節税対策を行って、賢く節税しましょう。