太陽光発電の固定資産税が対象となるケースとは?固定資産税の計算方法も

土地や住宅を所有している人は、固定資産税について一定の理解がありますが、太陽光発電も固定資産税の対象となるのをご存じでしょうか。太陽光発電事業をスタートしても、固定資産税の存在を把握していなければ、予期せぬ支出に慌ててしまうかもしれません。

そこで今回は、太陽光発電と固定資産税の関係について詳しく説明します。固定資産税の対象となる事例から、実際の支払額がわかる計算方法についても紹介します。太陽光発電と固定資産税に興味関心のある人は、ぜひ最後まで記事をご覧ください。

目次

太陽光発電における固定資産税とは?

太陽光発電設備と固定資産税の関係を理解するには、まず固定資産税を把握する必要があります。固定資産税は、基本的に土地や住宅などの不動産を対象に課税される税金です。しかし、太陽光発電設備が固定資産として扱われ、その価値にもとづいて課税というケースもあります。

しかし、課税標準額が150万円未満の場合、固定資産税は課税されません。ただし、事業を継続しているときは、毎年必ず償却資産の所有状況申告が必要になる点には注意が必要です。

太陽光発電で固定資産税の対象となるケース

太陽光発電を導入する際は、条件によって固定資産税の対象となるケースが存在します。それでは、どのようなケースが対象となるのでしょうか。ここでは、課税対象となる具体例をいくつか紹介します。

1.出力10kW以上の産業用設備の場合

太陽光発電の出力が10kW以上であれば、一般的に「産業用」と認識されます。仮に家庭で使用するために導入された設備でも、規模感と機能性から収益目的で運用しているとみなされます。大きな太陽光発電設備は単なる住宅用設備とは異なり、ビジネス目的と関連づけられるため、固定資産税の対象として扱われます。

したがって、太陽光発電設備を検討する場合は、設備の規模や出力だけでなく、固定資産税の影響も頭に置いておくとよいでしょう。

2.10kW未満でも産業用とみなされる場合

太陽光発電の出力が10kW未満である場合も、設備自体が事業収入に寄与しているときは固定資産税の対象になるかもしれません。たとえば、自宅を店舗兼住居としている場合は、産業用とみなされるため課税の対象です。

同様に、自宅の一部を賃貸用として利用し、部屋の電力供給を太陽光発電で行っている場合も、自宅が事業収入に関連していると判断されます。したがって、太陽光発電の出力が10kW未満であっても、環境や使用状況により固定資産税の対象となる点は覚えておきましょう。

3.屋根と一体型の設置形態の場合

太陽光発電のパネルには、デザイン性が高く人気の「屋根一体型」があります。一体型のパネルは、その設置形態から家屋の一部とみなされ、住宅における固定資産税の評価額対象と判断されます。理由としては、パネルが屋根と一体化していることから、設備自体が住宅の一部として評価されるためです。

また、屋根と一体型の太陽光パネルは、デザイン性の高さゆえに住宅の評価額を底上げする効果もあります。したがって、太陽光発電のパネルを屋根と一体型で設置する場合は、固定資産税と不動産価値向上といった両面のリスクを理解しておくべきでしょう。

太陽光発電で固定資産税の対象とならないケース

太陽光発電は、固定資産税の対象とならないケースもあります。太陽光発電を運用するうえで、固定資産税がかからないケースを理解するのは経済的な面からも重要なポイントです。では、具体的にどのようなケースが考えられるのでしょうか。ここでは、対象とならないケースについて詳しく解説します。

1.出力10kW未満の住宅用設備の場合

太陽光発電の設備が10kW未満であれば、その設備は固定資産税の対象にはなりません。出力が10kW未満の設備は、営利目的ではなく個人利用が目的とみなされるためです。なお、10kWの電力は太陽光パネルを40〜50枚程度設置した場合の電力量で、太陽光パネル1枚あたりは通常約200〜250Wの出力を持ちます。

したがって、家庭用の屋根に40〜50枚のパネルを設置することは、設置面積などを踏まえると一般的な住宅では難しいでしょう。このように、10kW未満の太陽光発電設備は、規模感と個人利用を主目的としていることから、固定資産税の対象外となるのです。

2.取り外し可能な設備の場合

太陽光発電設備は取り外しの可否により、固定資産税の対象から外れる可能性があります。この背景には、固定資産税は基本的に動かせないものが対象となる、つまり土地や住宅といった不動産に課される税金といった事実があるためです。具体的には、住宅や社屋、工場の屋根に架台を取りつけて太陽光パネルを設置する場合などです。

取り外しが可能な設備は「非固定の設備」とみなされ、固定資産税の対象から除外されます。しかし、設置場所や設置方法により課税対象になる可能性もあります。そのため、太陽光発電設備を設置する際は、事前に課税対象になるかどうかを確認するとよいでしょう。

課税対象でも10kW以上の太陽光発電を選ぶメリット

太陽光発電設備を選ぶ際、10kW以上の大規模設備は、初期投資や固定資産税の負担といったマイナスな部分を感じるかもしれません。しかし、太陽光発電が10kW以上の設備には、多くのメリットが隠されているのをご存じでしょうか。

そこで、以下では10kW以上の太陽光発電設備を選ぶメリットを詳しく解説します。固定価格買取制度の延長、コストパフォーマンスの向上、災害時の非常用電源としての利用価値など、さまざまな側面からメリットを探ります。

固定価格買い取り制度の期間が20年まで延長になる

太陽光発電設備の運用を考える際は、固定価格買い取り制度(FIT制度)による買い取り期間が重要な要素になります。この制度は、発電された電力を一定期間、固定価格で買取り保証するもので、買い取り期間は住宅用と産業用で異なります。

  • 住宅用太陽光発電:10年間
  • 産業用太陽光発電:20年間

また、2024年度における10kW以上50kW未満の太陽光発電の1kWhあたりの買い取り価格は、10円/kWhに設定されています。このように、FIT制度による長期間の買い取り保証と期間中の安定した買い取り価格は、産業用太陽光発電設備の導入を検討する際の大きなメリットとなるでしょう。

コストパフォーマンスが上がる

太陽光発電は設備の規模が大きくなればなるほど、1kWあたりの設置費用は低くなり、コストパフォーマンスが向上します。なぜなら、パワーコンディショナーや送電設備は設備規模が増えても、増額するわけではないためです。そのため、設備規模が大きいほど、その分コストパフォーマンスが高まります。

災害時の非常用電源として活用できる

太陽光発電は、太陽の光があれば発電が可能なため、さまざまな災害により電力供給が停止したときでも自宅で電気が使用できます。現代において、電気の重要性はますます高まっており、非常事態でも電気が使用できる点は大きなメリットです。

日常生活で重要な電化製品としては、冷蔵庫やエアコン、洗濯機、電子レンジなどがあります。これらの製品は、食物の保存から温度調節、衣類の洗浄、食事の調理など、日常生活には欠かせない設備です。

また、停電が長期間続くような大規模な災害時でも、太陽光発電により電力の自給自足が可能になるため、生活の質をキープできます。これらの理由から、太陽光発電は災害時の非常用電源として、とても有効であるといえます。

太陽光発電設備の固定資産税には減税特例が設けられている

太陽光発電設備の固定資産税は、税制上の特例措置により減税される可能性があります。この特例措置は、「再生可能エネルギー発電設備に係る課税標準の特例措置」といった名称で、特定条件を満たすことで補助金が受けられます。

  • 課税標準の特例措置とは

再生可能エネルギーの安全保障や低炭素社会の実現、エネルギー関連産業の発展と雇用拡大の促進を目指している国の政策の一部です。本制度は2012年度から始まり、2016年度に一度改正されていますが、現在は2024年度までに取得した太陽光発電設備が対象です。

  • 特例措置の対象設備
  • FIT(固定価格買取制度)の認定を受けていない
  • 10kW以上の発電能力を持つ太陽光発電設備で、自家消費が目的
  • 「再生可能エネルギー事業者支援事業費に係る補助金」の認定を受けて設置した設備
  • 特例措置の内容

対象となる太陽光発電設備の固定資産税が3年間、設備の課税標準額の3分の2に減税されます。ただし、この特例の適用を受けるには、必要書類を設備の所在地を管轄する市区町村へ提出する必要があります。

以上のことから、今後太陽光発電設導入の際は、固定資産税の減税特例が対象かどうかを必ず確認することが重要です。事前に特例措置の対象か否かを理解することで、設備の導入費用だけでなく、運用コストも最小限に抑えられます。

太陽光発電設備にかかる固定資産税の計算方法

太陽光発電設備の固定資産税額は、設備取得価額と減価率から計算します。計算式は以下のとおりです。

取得価額 × (1 – 減価率) = 評価額(課税標準額)

例をあげると、10kWの太陽光発電設備の取得価額が500万円だったとします。この場合、初年度の減価率0.064を用いて、評価額を計算します。つまり、「500万円 × (1 – 0.064) = 468万円」が初年度の評価額となります。

次に、先ほど算出した評価額に固定資産税の標準税率1.4%を掛け、固定資産税額を求めます。このとき、設備取得後3年間は固定資産税額の減免特例が適用されるため、実際の固定資産税額は計算された額の3分の2で計算します。

上記の減免措置も踏まえると、初年度の固定資産税額は「468万円 × 1.4% × 2/3 = 4万3,680円「が正しい金額です。なお、太陽光発電設備の法定耐用年数は17年と定められており、減価率も0.127と設定されています。2年目以降は太陽光発電設備の評価額も減少し、それに伴い固定資産税額も少なくなる仕組みです。

このように、太陽光発電設備にかかる固定資産税額は、取得価額、減価率、そして減免特例の適用有無によって決まるため、これらの要素をきちんと理解しておくことが重要です。

太陽光発電設備にかかる固定資産税の申告方法

固定資産の所有者は、1月1日時点で所有しているものを1月31日までに申告しなければなりません。申告方法は、市区町村の税務事務所に申告書類を提出する方法と、「eLTAX(地方税ポータルシステム)」を利用してオンラインで申告データを提出する方法の2つがあります。

初めて申告する場合は「償却資産申告書」、「種類別明細書」の別表「増加資産・全資産用」を提出しなければなりません。そして、2年目以降に所有資産が減少した場合は、別表「減少資産用」に変更内容を記入します。

なお、申告内容は「償却資産課税台帳」に登録され、納税義務者が要望すれば閲覧も可能です。納税通知書は毎年4月から6月に送られ、通常は4回に分けて納税します。ただし、課税標準額が150万円を下回る場合は非課税となり、納税通知書は送られません。

太陽光発電設備にかかる固定資産税の申告を忘れた場合は?

2011年の東日本大震災以降、太陽光発電への注目が高まり、太陽光発電設備の導入を検討する事業者も増えています。しかし、太陽光発電事業者を対象に税務調査をおこなった結果、過去に所得隠しや申告漏れが多く見つかっています。

2020年には、太陽光発電事業者の5つの企業に税務調査が行われ、4年間で約30億円の所得が不正に隠されていたことが発覚しました。結果的に、5社合わせて約6億円の追徴税が課せられました。

このように、税務調査で申告漏れが発覚した場合は適切な納税額に加え、延滞税や加算税などの厳しいペナルティが課せられます。したがって、もし申告を忘れてしまった場合は、すぐに税務署に相談してください。

まとめ

本記事では、太陽光発電設備に係る固定資産税について解説しました。記事内では、固定資産税の対象となる設備と非課税になるケースも紹介しました。さらに、固定資産税を申告し忘れた場合のペナルティなどにも触れています。税務署への適切な申告が重要である点を強調し、申告忘れがあった場合は税務署への速やかな報告が重要です。

なお、太陽光発電設備の税金の種類や節税について、知識や理解を深めたい人は以下の記事も合わせてご覧ください。

太陽光発電にかかる税金の種類とは?節税対策もあわせて解説!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!