太陽光発電の全量売電・余剰売電とは?どちらがお得かを紹介

太陽光発電は、エネルギーコストの削減や将来的な電力供給の安定化、さらには省エネルギーや環境保護への貢献など多岐にわたるメリットをもたらします。また、投資目的で産業用太陽光発電を運用している人にとって太陽光発電は、重要な収入源といえるでしょう。

そのため、太陽光発電を運用する際は収入を最大限に伸ばすために、運用方法を見極める必要があります。そこで今回は、太陽光発電の売電方法について詳しく解説します。記事内では、2種類の販売方法の違いからメリットやデメリットについても詳しく紹介しています。

目次

そもそも、太陽光発電の売電制度とは?

「太陽光発電の売電制度」とは、太陽光発電設備で発電された電力を電力会社に売却できる特定の仕組みを指します。本制度は、太陽光発電設備を運用する投資家にとって重要な収益源となるため、近年注目を集めている仕組みです。

売電制度の特徴は、売却金額が国の定めた価格にもとづいている点です。売却価格は経済産業省により決定され、FIT制度(固定価格買取制度)として知られています。2024年度の太陽光発電の売電価格は、発電容量が10kWh〜50kWh未満の場合、1kWhあたり10円(税込み、売電期間20年)と定められています。

FIT制度について

FIT制度は、「Feed-in Tariff(フィード・イン・タリフ)」の頭文字を取った略語であり、日本語訳すると「固定価格買い取り制度」を意味します。FIT制度は再生可能エネルギーから生成され、発電した電力を電力会社が一定の期間と価格で買い取る仕組みで、国が保証している制度です。

電力会社は、国から固定価格での買い取りを一定期間義務づけられるため、期間内でのキャンセルや価格の変更はできません。なお、本制度終了後も電力会社との契約を延長し、再生可能エネルギーの売電自体は可能です。

全量売電とは

全量売電とは、太陽光発電により発電したすべての電力を、電力会社に売却する方法です。全量売電は安定した売電収益が見込めることから、「産業用太陽光発電」ともいわれています。対象は、発電設備の設置容量が50kW以上(ただし250kW以上は入札が必要)の設備です。

全量売電のメリットは、何といっても「売電により得られる安定収入」です。余剰売電の場合は、毎月売電できるのは余剰分に限られるため、収入はそれほど多くはありません。また、毎月の収入額に変動があるため、安定収入として予測するのは困難です。しかし、全量売電の場合は毎月の収入額が一定になるため、収支管理がしやすい点は投資家目線で考えると大きなメリットといえるでしょう。

一方、全量売電のデメリットは、FIT制度で定められている売電価格が毎年下降傾向にある点です。直近数年の利回りに大きな変動はありませんが、想定よりも収入が少なくなる場合もあります。このため、全量売電を選択する際は売電価格の動向をしっかりと把握し、適切な投資計画を立てることが重要です。

余剰売電とは

余剰売電とは、太陽光発電を利用して発電した電力のうち、自分たちが必要とする分だけを使用し、それ以上に発電した電力(余剰電力)を電力会社に売る仕組みです。余剰売電も全量売電同様に、メリットとデメリットがあります。

余剰売電のメリットは、「自家消費電力による電気代の削減」と「余剰電力の売電収入」といったダブルの効果がある点です。一つは、自家消費電力により、発電した電力を自宅や施設で使うことで電気代を減らせます。もう一つは、余剰電力を電力会社に売電することで収入が期待できる点です。これにより、太陽光発電設備の設置費用を回収するとともに、一定の収益が見込めるのは、投資家として大きなメリットといえるでしょう。

余剰売電のデメリットとしては、全量売電で説明したとおり、FIT制度が定めている売電価格が年々下降している点です。電力会社に売る電力の余剰分だけでは、大きな収入にはつながらないかもしれません。

2020年からで50kW未満の低圧は全量売電ができない

2020年より、10kW以上50kW未満の小規模事業用太陽光発電では、全量売電ができないといった制度変更が施行されました。制度変更の主な理由は、2020年から新規にFIT(固定価格買い取り制度)認定された設備に対して、地域活用要件が設定されたためです。

地域活用要件とは、停電時などに使用できるように、太陽光発電設備を地域全体に分散することを目指したものです。地域活用要件の導入により、地域全体の電力供給の安定性と停電時における早急な復旧を期待できます。全量売電禁止の対象となるのは、以下の二項目です。

  • 2020年度から新しくFIT認定を受けた設備
  • 10kW以上50kW未満の小規模事業用太陽光発電設備

なお、2019年以前にFIT認定を受けている発電設備は、新規制の対象外です。そのため、現状のままで運用できます。これらの点を踏まえると、今後50kW未満の太陽光発電で全量売電する場合は、「2020年以前にFIT認定を受けた太陽光発電所」の購入を検討したほうがよいでしょう。

高圧は入札制度の対象が広がる

2020年から新しいFIT制度が導入された結果、250kW以上の高圧発電所の売電価格は、入札制度で決まる仕組みに変更されました。入札制度とは、事業者が売電価格を提示し、もっとも安い価格を提示した者から順に落札される制度をいいます。

入札制度の難しいところは、落札価格(売電価格)は入札が行われるまで確定せず、時間がかかってしまう点です。また、最低落札価格も事前に決定されており、今までのFITと比較すると、買い取り単価が安くなるかもしれません。

入札制度をより理解するために、これまでの太陽光発電の入札結果を以下の表で紹介します。

 上限価格入札価格(平均)
1回21.00円/kWh19.64円/kWh
2回15.50円/kWh落札者なし(入札額が上限価格を上回ったため)
3回15.50円/kWh15.17円/kWh
4回14.00円/kWh12.98円/kWh
5回13.00円/kWh12.57円/kWh

入札制度は、初めて聞くと難解な印象を持つかもしれませんが、仕組みを理解すれば利益確保も可能です。なぜなら、太陽光パネルや太陽光発電システムの価格自体が安くなっていて、低圧の太陽光発電より高圧発電所は1kWあたりの価格が安価であるためです。

こうした傾向は、太陽光発電の規模が大きくなるほど投資効率が上昇することを示しています。したがって、太陽光発電の投資を検討している方は、高圧発電所の利点を活かすことでより効率的な投資を期待できるでしょう。

全量売電と余剰売電どちらがお得?

全量売電と余剰売電のどちらが得なのかどうかは、設置する太陽光発電の規模や運用目的により大きく変化します。全量売電は、太陽光発電で発生した全電力を電力会社に売却する方式です。余剰売電に比べ一定の収入が見込めることから、投資回収の目安も立てやすい点は大きな魅力です。

一方、余剰売電は自家消費電力による電気代の削減と、余剰電力の売電収入といった両面の効果が期待できます。こちらの方法はエネルギー需要が一定で、自身で消費する電力が多い場合に有効です。

以上のことから、全量売電と余剰売電のどちらがお得かどうかは、個々の状況により異なるといえます。太陽光発電で得た電力のエネルギー需要や投資目的をよく考え、適切な運用方法を選ぶことが重要です。

50kW未満も余剰売電の対象に

2020年の新しいFIT(固定価格買取制度)により、50kW未満の太陽光発電も余剰売電の対象に変更されました。

FIT制度の変更により、10kW以上50kW未満の太陽光発電は「発電した電気の50%まで買取対象」という新たな規定が設けられています。ただし、新しい制度では晴れの日が続いて多く発電できたとしても、買取対象となる電力は発電量の半分しかありません。それゆえ、残りの電力を自家消費しなければ、発電した電力が無駄になってしまいます。

余剰電力を無駄にしない有効な対策は、蓄電池を導入して余剰電力を貯蓄する方法です。蓄電池には、発電した電力を一時的に蓄える機能があり、必要なときに使用できる特徴を持っています。蓄電池を使用することで、余剰電力の無駄を防ぎつつ、電力費の節約にもつながります。このように、50kW未満の余剰売電はエネルギー利用の効率化、非常時の備えといった複数の観点から有効な選択肢といえるでしょう。

産業用太陽光発電は自家消費型も選択肢に

産業用太陽光発電を、2023年以降にスタートさせるなら、売電よりも自家消費型のほうが経済的なメリットを受けられる可能性があります。理由としては、グリッドパリティと呼ばれる現象が生じているためです。グリッドパリティとは、太陽光発電で発生した電力コストが、電力会社から購入する電気代よりも安くなる「逆転現象」を指します。

また、最近ではグリッドパリティとともに「ストレージパリティ」の達成も求めています。ストレージパリティとは、太陽光発電を導入する際、蓄電池を使用した方が経済的なメリットが受けられる状態を指します。このように、産業用太陽光発電は自家消費型を選択することで、より経済的なメリットが得られます。

売電収入で利益を増やす方法

太陽光発電事業は、売電によって得られる収入も大きな魅力のひとつです。しかし、単純に太陽光発電を設置し、電力を生産するだけでは十分な利益確保は難しいかもしれません。そこで、売電収入を最大限に増やすためには、どのような方法があるのでしょうか。以下では、売電収入で利益を増やす具体的な方法を紹介します。

50kW以上の高圧型で全量売電する

50kW以上の高圧太陽光発電であれば、2020年以降も全量売電が可能です。太陽光発電は規模が大きくなれば、それだけ1kWあたりのシステム価格が安くなります。そのため、初期費用はかかるものの、投資回収は困難ではありません。

ただし、50kW以上の高圧太陽光発電の設備には、管理面のコストがかかる点に注意が必要です。具体的には、キュービクルの設置や、電気技術者の選任などが義務づけられています。また、初期費用も低圧太陽光発電に比べて高騰するため、事前に収支シミュレーションを実施して、投資回収が可能かどうかを確認しましょう。

FIT認定済みの低圧型で全量売電する

2020年以降、新規に設置する太陽光発電設備(10kW〜50kW未満)は、余剰売電しか選択肢がありません。しかし、FIT(固定価格買取制度)の認定を取得済みの発電設備であれば、稼働開始から20年間全量売電が可能です。

こうしたFIT認定済みの発電設備の購入を考える際は、投資効果を正確に評価するため、発電設備の性能や状態、運用期間や地域なども考慮に入れる必要があります。さまざまな角度から評価することで、太陽光発電による収益がより確実なものになるでしょう。

中古物件で全量売電する

中古の太陽光発電設備は、FIT認定取得済み物件と同様、FIT取得時の価格で全量売電できる点が大きなメリットです。また、新規として設備投資するよりも費用対効果が高いため、投資家にとっては魅力的な選択肢といえます。

また、新築の太陽光発電システムでは発電量の見込みが難しいですが、中古では過去の発電データをもとに予測が可能です。これは、投資リスクを最小限に抑えるうえで大きな利点となるでしょう。

まとめ

本記事では、太陽光発電の全量売電と余剰売電について解説しました。記事のなかでは、2種類の売電方法の違いからメリット、デメリットも紹介しています。現在、太陽光発電への投資を検討中の人は、今回の記事をぜひ参考にご自身に最適な投資方法をお選びください。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!