太陽光発電を運用するとパワーコンディショナーから電磁波が発生するため、健康被害について気になる方も多いのではないでしょうか。
電磁波が与える人体への影響を理解できると、太陽光発電の電磁波についてそれほど不安に感じなくなるはずです。
そこで今回は、太陽光発電から電磁波がどのように発生するのかを具体的に解説します。この記事を読むことで、電磁波の影響による健康被害について理解できます。
太陽光発電を運用しようと考えている方はぜひ確認してください。
太陽光発電から電磁波は発生している?
太陽光発電から電磁波が発生しているかどうかですが、結論からいうと電磁波は発生しています。太陽光発電から電磁波は発生していますが、電磁波が人体にどのような影響を及ぼすかを把握すると不安に感じないでしょう。ここでは、電磁波の概要について詳しく解説します。
そもそも『電磁波』とは?
電磁波とは、電流を流した際にできる電界と磁界のことを指します。電解は電気の力が働く場所であり、磁界は磁力の力が働く場所のことを指します。例を挙げるとプラスチックで頭をこすると髪の毛が静電気で逆立ちますが、これは電界による影響です。
一方、平らな床に砂鉄をおいて磁石を近づけると、磁石と砂鉄がくっつくのは磁界が影響しているためです。電界と磁界が影響すると電磁波が発生しますが、交流電圧ではプラスからマイナスに変換する際に、周波数の影響で電磁波が発生します。太陽光発電のパワーコンディショナーにおける電磁波発生は、交流電圧が関係しています。
金属などの導体に電流が流れると、右ねじの法則であるアンペールの法則でも示す通り、電流の流れる方向の時計回りに磁界が発生します。電流の向きが変わると、磁界の向きも変わります。交流電流は常に電流の向きが変わるため、磁界を強めます。この動作を繰り返すことで磁界が連続して発生し、その波のことを電磁波と呼びます。
電磁波が強すぎると人間の健康被害に影響を及ぼすため、電磁波の基準値を超えないように電化製品などは作られています。健康に影響が出る電磁波の基準値を知ると、太陽光発電を運用するのは怖くはないでしょう。
電磁波の影響として身体に直接影響はありませんが、電磁波過敏症などがあります。電磁波過敏症の方が電磁波を浴びてしまうと、体調を崩したり精神状態が不安定になったりします。電磁波が直接健康に影響を及ぼさなくても、電磁波過敏症の方には多少の電磁波でも気になるでしょう。電磁波過敏症は治らない病気ではありません。その日の体調によっても体調が異なり、ストレスを感じない生活を送ることで防げる場合があります。
電磁波過敏症対策としては、適度な運動やリラックスを意識することが重要です。日々の生活のなかで電化製品やスマートフォンを利用する方は、使用時間や使用方法を意識するだけで改善されることがあります。
電磁波過敏症の方でも、太陽光発電の電磁波は影響ないといえます。なぜなら、太陽光発電の電磁波は生活で使用する電化製品の電磁波より低い数値であるためです。太陽光発電の電磁波は身体に影響ありませんが、それでも気になる場合はパワーコンディショナーの設置場所を変えるなどの対策がおすすめです。
太陽光発電の電磁波はどこから発生するのか
太陽光発電のどこから電磁波が発生するかを把握できると、少しは安心できるでしょう。ここでは、太陽光発電のどこから電磁波が発生するかを具体的に解説します。
太陽光パネルからは発生していない
太陽光パネルからは電磁波は発生していません。太陽光パネルに太陽光があたることで発電しますが、この電気は直流になります。直流電流の場合でも磁界はできますが、時間的変化が生じないため、直流電流では電磁波は発生しません。
交流電流は、時間の経過とともに変化します。時間的変化が起こると磁界が継続的に発生し、電磁波が発生します。時間的変化を起こさない太陽光パネルなどの直流は、電磁波を生じません。私生活で使用する電池も直流電流であり、電磁波を発生していないといえます。
パワーコンディショナーから発生している
パワーコンディショナーは電磁波を発生させます。パワーコンディショナーは直流電流を交流に変える装置のことで、直流を交流に変換すると電界と磁界が作用して電磁波が発生します。
パワーコンディショナーは家庭用の電化製品よりも大きいため、大きな電磁波が発生すると勘違いする方が多いですが、実際のところパワーコンディショナーからの電磁波は人体に影響するほどの電磁波は発生させていません。しかし、電化製品と同じく交流電流が流れているため、電磁波は発生しています。
接続箱から発生はしていない
接続箱は太陽パネルとパワーコンディショナーを束ねる箱であり、発電した電力を取りまとめる役割を果たします。接続箱からパワーコンディショナーに電力を供給しますが、供給する際の電力はまだ直流であるため、接続箱からは電磁波は発生していません。電磁波が発生するには、交流の電流が流れる必要があります。
太陽光発電の設備のなかで電磁波が発生するのは、パワーコンディショナーだけです。ほかの設備からは電磁波は発生しないと知っておくと、より安心して太陽光発電を運用できるでしょう。
太陽光発電の電磁波は、身体に悪影響なのか?
太陽光発電のパワーコンディショナーからの電磁波について、体に悪影響ではないか気になる方も多いでしょう。ここでは、電磁波と健康被害との関係性や電磁波が安全な基準について解説します。
健康被害の心配はまずない
太陽光発電の電磁波は、健康被害はないと考えてよいでしょう。一定基準の電磁波を浴びると身体に影響しますが、太陽光発電の電磁波はごく微量なため、悪影響を及ぼすほどの被害はありません。
太陽光発電以外の電化製品でも電磁波は発生しています。電化製品などでも電磁波の影響がでないように設計されているため、あまり気にする必要はありません。電磁波の基準値以上に浴びてしまうと、短期的影響と長期的影響で身体被害が報告されています。
基準値以上の電磁波を浴びると、短期的には神経や筋肉系統に長期的には小児白血病が起こる可能性が示唆されています。しかし、これらの健康被害もいまだにすべては解明されてはおらず、強い関連性があるわけではありません。国際的に設定されている電磁波の量を浴びなければ、これらの身体的影響はないでしょう。
電磁波の規制は200μT以上である
電磁波の規制の対象は200μT以上であり、世界保健機関であるWHOの定める基準と同じです。この基準を超えると身体に影響を及ぼすため、強い電磁波が発生する機器を使用する際は気をつけなければいけません。
街中で見かける電柱で地表1mにて観測すると、電柱の送電線から発する電磁波は6.4μT、地下に埋まっている地中送電線の電磁波は6.2μTです。電柱からの電磁波は、身体に影響を及ぼさないことがわかります。
直流電流を交流電流に変換する変換器の近くで計測すると、通常の電磁波よりも高い数値を示します。また、高電圧の送電線などは電磁波が強くなると感じるかもしれませんが、電圧の高さと電磁波との関連性はありません。
電磁波が大きくなる要因は、電流の大きさと発生源からの距離で決まります。変電所などでは夏場などの電力をよく使う時期に電磁波が強くなりますが、それでも人間の健康に被害を及ぼさない程度です。
パワーコンディショナーの電磁波の目安
パワーコンディショナーの電磁波の目安を知っておくと、太陽光発電を運用しても心配にならずに済みます。ここでは、住宅用と産業用に分けて電磁波の強さの目安について解説します。
産業用の場合
産業用のパワーコンディショナーの電磁波の目安は11.92μTであり、健康被害の基準である200μTよりも低い数値です。この11.9μTという数値は、財団法人電気安全環境研究所(JET)によるデータですが、もっとも大きい産業用の太陽光発電の電磁波の値でも基準を大幅に下回っていることがわかります。
住宅用の場合
住宅用パワーコンディショナーの電磁波の目安は4.26μTであり、産業用のものよりさらに低い数値になっています。こちらの数値も財団法人電気安全環境研究所(JET)によるデータであり、4.26μTはもっとも大きな住宅用のパワーコンディショナーから生じる電磁波の値です。産業用よりも発電量が小さいため、身体への影響も小さいと考えるとよいでしょう。
電磁波は家庭用電化製品からも発生している
そもそも、電磁波は太陽光発電だけでなく、日常生活で使用する家電製品でも発生しています。家電製品である、こたつや扇風機は太陽光発電の数値よりも大きいです。たとえば、500Wのこたつの場合では、0cmの距離で測ると36.2μTです。20cmの距離で測ると、2μTの電磁波が発生しています。こたつの電磁波が影響で、健康被害が発生した事例はありません。
また、扇風機の場合は20cmの場合は16.9μTであり、30cmの場合は7.47μTの電磁波が発生しています。扇風機を近づけて使用すると健康被害の数値に近づくため、離れて使用したほうがよいでしょう。
ほかの電気製品では、IH調理器を5~10cm範囲で使用すると27μT、掃除機を30cm範囲で使用すると2~50μT、電気カーペットを2.5cm範囲で使用すると10~20μT、洗濯機を30cm範囲で使用すると0.2~0.3μTです。どの電化製品の電磁波量をみても、健康を害する基準の200μTを大幅に下回ります。
電磁波の影響を受けないようにするもっともよい方法は、距離をとることです。普通に使っていれば健康に問題はありませんが、距離をとることでさらに電磁波の浴びる量を減らせます。こたつでは、至近距離での使用では36.2μTであるのに対し、30cm以上距離をとって使用すると0.853μTまで減少します。扇風機も至近距離では339μTであるのに対し、30cm距離をとると7.47μTになります。
扇風機やこたつを使用しても、上記の数値からわかるように健康被害はとくに問題ありません。日常生活で使用する電化製品よりも電磁波が低いため、それほど不安に感じる必要はないでしょう。
それでも太陽光発電からの電磁波が気になる場合は?
家電製品よりも太陽光発電のほうが電磁波は少ないと説明をしましたが、それでも不安に感じる方は、パワーコンディショナー本体から離れるようにしましょう。扇風機やこたつと同様に、電磁波が発生している部分から離れることで浴びる電磁波の量を減らせます。太陽光発電を起動させているときは、パワーコンディショナーから数メートル離れて作業してください。
距離をとる以外の方法では、屋外にパワーコンディショナーを設置するのも有効です。パワーコンディショナーの電磁波の量ならば、屋内に設置してもそれほど気にする必要はありませんが、気持ち的に不安に感じる場合は設置場所を屋外にしましょう。分電盤の近くにパワーコンディショナーを設置することが多いですが、パワーコンディショナーを屋外に設置する希望を業者に頼める場合があります。
しかし、もともと室内にパワーコンディショナーを設置しようとしていた場合は、追加で費用がかかる場合があります。業者に依頼する際は、どのくらいの費用がかかるかを相談したうえで判断してください。
太陽光発電のパワーコンディショナーの電磁波は、電化製品の電磁波よりも低いです。太陽光発電のパワーコンディショナーが大きいため、健康被害が大きいと勘違いしてしまいますが、それほど心配する必要はありません。もし不安に感じてパワーコンディショナーの設置場所に困っている場合は、電磁波が届かないような工夫を行うとよいでしょう。
まとめ
今回は、太陽光発電から電磁波が発生する理由について解説しました。電磁波が健康に与える影響について把握しておくと、太陽光発電を運用しても心配せずに済みます。太陽光発電の電磁波はそれほど心配する必要はありませんが、気になる方は屋外にパワーコンディショナーを設置したり、距離をとったりして対策をしましょう。