関東近辺で太陽光発電所のケーブル盗難多発|中部地方をはじめ全国に拡大のおそれ

関東近辺で太陽光発電所のケーブル盗難多発|中部地方をはじめ全国に拡大のおそれ

近年、関東を中心に太陽光発電所でのケーブル盗難事件が多発しています。令和6年(2024年)5月、栃木県壬生町の太陽光発電所から、長さ2.3キロメートルの銅線ケーブル(1380万円相当)を盗んだとして、カンボジア国籍の容疑者が警察に再逮捕されました。この容疑者は、これ以外にも栃木県や福島県など6県で窃盗を繰り返し、被害額は総額約6,900万円といわれています。このニュースは、ご存じの方も多いのではないでしょうか。

この事件のように太陽光発電所の銅線ケーブルが盗難にあうのは、銅の価格が高騰しているためです。太陽光発電所は人里離れた場所にあることが多く、高く売れる銅を盗みやすいといえるでしょう。

これまでは、銅線ケーブルが多くあり太い銅線ケーブルも多い高圧の太陽光発電所が盗難被害にあっていました。しかし、最近では低圧の太陽光発電所の盗難被害も多く報告されています。

この動きは関東近辺だけにとどまらず、中部地域をはじめとして全国に広がっています。中部電力パワーグリッドは「【防犯対策の勧め】太陽光発電設備の窃盗被害について(2023年11月)」として注意喚起を促しているほどです。

では、太陽光発電所が銅線ケーブルの盗難にあうとどのような被害があるのでしょうか?また、盗難にあわないためにはどのような対策が必要なのでしょうか?

今回は、太陽光発電所が銅線ケーブルの盗難にあった場合の被害と盗難防止対策についてわかりやすく解説します。

太陽光発電所を運営している事業者様のお役に立てば幸いです。

目次

盗難被害がもたらす事業者への深刻な影響

「太陽光発電所がケーブル盗難被害にあっても保険があるから大丈夫」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。

残念ながら、盗難を補償対象外とする保険会社が多いのが現状です。そのため、盗難被害にあった場合、事業者は多くの実害を受けます。

実害としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 金銭負担の実害
  • 売電停止による実害
  • 保険料上昇の実害
  • 二次被害による実害

順番に解説します。

金銭面の実害

ケーブルの盗難被害にあった場合、火災保険への加入で復旧工事費用が補償される場合もあります。ただし、現在では、盗難自体が補償内容から外されている、もしくは免責金額100万円が設定されている保険が多い状態です。そのため、盗難被害にあったケーブルの長さによっては100万円も負担しなくてはならない場合もあります。

また、フェンスを壊して侵入するパターンが多く、破損したフェンスを修繕する費用も必要です。

盗難にあうと、このように事業者は金銭面で実害を被ることとなります。

売電停止による実害

ケーブルの盗難にあった場合、太陽光発電所は売電が停止してしまいます。

ケーブル盗難被害にあいやすいのは、太陽光発電所と外部の電力会社との間をつなぐケーブルです。太陽光発電所が管理するケーブルが切断されると、たとえ発電ができても売電ができません。もちろん、それ以外のケーブルが盗難にあっていることも考えられるため、安全の確認をしてから発電をしなくてはなりません。

そして、ケーブル盗難の際、太陽光発電所側のケーブルだけでなく、電力会社が管理するケーブルも切断されてしまうケースが多発しています。電力会社が管理するケーブルは電力会社側が修理することになります。この工事に2〜3ヶ月要することも多く、その期間中は電力会社側に電気を送れないため太陽光発電所の売電はゼロです。

この期間は、休業補償保険で補償される場合もあります。しかし、現在では火災保険と同様に補償されない場合が多いので要注意です。

このように売電停止により事業者は大きな実害を被ります。

保険料上昇の実害

盗難が重なると、保険料が上昇する可能性もあります。複数回盗難被害にあっている太陽光発電所も実際にあるのです。

保険料の上昇は運営コストに反映されるため、運営コストが上昇し事業がうまくいかなくなる可能性もあります。また、保険契約の更新時に保険会社から更新自体を拒絶されてしまう場合もあるので、要注意です。

つまり、事業者は保険料の上昇や保険の契約更新の拒絶といった実害を被ります。

二次被害による実害

二次被害としては、ケーブルが盗難されたことによる事故などがあります。ケーブルの盗難があった箇所だけを修繕してそれ以外を細かく確認せず、他の箇所から火花が出てボヤを起こすなどの思わぬ二次被害に発展してしまった事例もあるようです。

このような二次被害は金銭面だけでなく発電所や事業者の信頼を損ない、経営面にも影響を及ぼす可能性があります。

事業者への影響は深刻

太陽光発電所がケーブルの盗難にあうと、直近の金銭面だけでなく、再稼働後の金銭面や社会的な信頼にも実害を及ぼしてしまいます。これらの実害は今後の経営にも影響するため、事業者としてはケーブルの盗難を防止しなくてはなりません。

次の章では、ケーブル盗難防止対策の考え方や具体例について解説します。

盗難対策は防犯の4原則が効果的

太陽光発電所のケーブル盗難への対策は、「盗みにくい」「対策してある」と窃盗犯に認識させることが大切です。

窃盗犯に認識させる方法としては、古典的ではありますが「防犯の4原則」に基づいたものが効果的だといわれています。

「防犯の4原則」とは以下の通りです。

  • 時間

順番に解説します。

時間

窃盗犯は侵入および犯行をおこなうのに時間がかかると敬遠します。太陽光発電所のケーブル窃盗の多くは、あらかじめ下見して侵入経路などを決めてから侵入する計画的な犯行です。そのため、下見した時点で「侵入が難しい」「時間がかかる」と判断すれば被害にあいにくいといえます。もし、侵入されてしまったとしてもケーブルを盗むのに時間がかかる場合は窃盗を諦めることもあります。

窃盗犯は当然のことながら犯行の前後や犯行中に人の目につかないようにしています。

太陽光発電所に人の目がある、もしくはカメラなどで記録していることがわかるようにすると敬遠します。

窃盗犯は侵入したことが分かることを嫌います。そのため、太陽光発電所に侵入したら大きな音がするとわかるようにすると敬遠します。

この音の対策を講じておくと、もし侵入されたとしても音で退散する可能性が高いといえるでしょう。

窃盗犯は、犯行現場に光があり、明るいと犯行が見えてしまうため敬遠します。そのため、侵入すると光が当たる、もしくは夜間にライトが付くなどの対策を講じると侵入を防ぎやすいといえます。

防犯の4原則に基づいた盗難対策を

古典的ではあるものの、「防犯の4原則」は非常に効果的です。この4原則に基づいた盗難対策は色々あります。

次の章では、この「防犯の4原則」に基づいた具体的な盗難対策の中でもおすすめの方法を低圧の太陽光発電所と高圧の太陽光発電所に分けて解説します。

低圧・高圧の太陽光発電所におけるおすすめの盗難対策

「うちは低圧だから狙われない」と思っておられる事業者様もいらっしゃるのではないでしょうか?先ほども述べたように、近年では高圧の太陽光発電所だけでなく低圧の太陽光発電所も被害にあっています。

そこで、今回は防犯の4原則に基づいたおすすめの盗難対策を低圧の太陽光発電所と高圧の太陽光発電所に分けて解説します。

低圧の太陽光発電所の盗難対策

低圧の太陽光発電所のおすすめの盗難対策としては、以下のような方法があります。対応する防犯4原則も併せて記載します。

  1. 一号柱周りのケーブルを隠す(時間の具体的な対策)
  2. 監視カメラ(目の具体的な対策)
  3. 警報装置(音の具体的な対策)
  4. センサーライト(光の具体的な対策)

順番に解説します。

一号柱周りのケーブルを隠す

時間の具体的な対策として、被害にあいやすい一号柱周りのケーブルを隠す方法があります。

電力会社に電気を送電するための一号柱周りのケーブルは、他のケーブルよりも太く銅の量が多いため被害にあいやすいケーブルです。

また、一号柱は電力会社の電柱と接続するため、施設の入口の近くなどアプローチしやすい位置にあります。これも盗まれやすい要因です。

そこで、一号柱にフェンスを設置する方法が効果的です。フェンスがあれば、窃盗犯は一号柱に近づくのに時間がかかるため敬遠します。もし、侵入を試みても施設自体のフェンスと一号柱のフェンスを壊す必要があり、時間がかかるため途中で諦める可能性が高くなります。

では、具体的な施工例を見ていきましょう。

ここでは、弊社の施工例をいくつかお見せします。

このように施設の端にある一号柱の周りにフェンスを設置します。

この例では、一号柱を取り囲み、ある程度の高さまで覆うようなフェンスを設置しています。

他の施設の例も見てみましょう。

写真からわかるように、この例では横に民家があります。しかし、太陽光発電所よりもかなり高い位置にあるので夜中に窃盗犯が来ても住人は気づきにくいでしょう。フェンスを設けて一号柱に近づきにくくすれば、もし侵入したとしても時間がかかるため住人に気づかれる可能性があります。窃盗犯は気づかれるのを避けるため、この方法は有効です。

ここまで、弊社の施工例をお見せしました。

フェンスを設けるのは比較的容易で費用もおさえられる方法です。なお、一号柱周りのケーブルを隠す同様の目的で「一号柱をコンクリートで固める」「一合柱を金属製の箱で覆う」などの方法も提案されています。

監視カメラ

目の具体的な対策としては、監視カメラの設置が有効です。

監視カメラは、窃盗犯に「録画している」と認識させる位置に設置するのが効果的です。窃盗犯が認識できない見えない位置に設置しても防犯の効果はあまりありません。

警報装置

音の具体的な対策としては、不審者の侵入があった場合に音を出す警報装置があります。

もし窃盗犯が侵入しても、警報装置から大きな音が出れば直接的な抑止力になります。また、警報装置の音は高音であり、夜でも人が気づきやすい音です。そのため、周囲に警告を発し、即時の対応を促す効果もあります。

下見の際に警報装置が備わっていると認識させることで、防犯に繋がります。

センサーライト

光の具体的な対策としては、不審者の侵入を検知して明るい光を当てるセンサーライトが挙げられます。

窃盗犯の侵入時や犯行時にセンサーライトから明るい光を当てることで、犯罪の意欲を弱めることができます。また、下見の際にセンサーライトが設置されていることを認識させれば防犯に繋がります。

高圧の太陽光発電所の盗難対策

高圧の太陽光発電所のおすすめの盗難対策としては、以下のような方法があります。対応する防犯4原則も併せて記載します。

  1. 露出ケーブルに被せものをする(時間の具体的な対策)
  2. 鍵付きのナットをハンドホールにつける(時間の具体的な対策)
  3. 監視カメラ(目の具体的な対策)
  4. 警報装置(音の具体的な対策)
  5. センサーライト(光の具体的な対策)

3,4,5は低圧の太陽光発電所の対策として解説したので、ここでは、1,2の対策について解説します。

露出ケーブルをコンクリートで固める

時間の具体的な対策として、露出ケーブルをコンクリートで固める方法が挙げられます。ケーブルをコンクリートで固めると、ケーブルの切断が困難となり時間がかかるため、盗難自体を抑止する効果があります。コンクリートを破壊・除去して窃盗しようとしても、時間と手間が必要です。窃盗犯は犯行に時間がかかることを敬遠するため、窃盗を抑止できます。

鍵付きのナットをハンドホールにつける

時間の具体的な対策として、鍵付きのナットをハンドホールにつける方法も効果的です。

高圧の太陽光発電所では点検用のハンドホールが多く存在します。ハンドホールの中であればケーブルを容易に取り出して簡単に盗める上、数も多いため狙われやすいのです。

例えば、令和5年(2023年)5月には、宮城県大崎市鳴子温泉の太陽光施設で少なくとも2キロメートルを超える銅線ケーブルの盗難被害がありました。これも、ハンドホール内からケーブルを盗む方法による窃盗でした。

ハンドホールに鍵付きのナットをつけ、蓋を簡単に開けられないようにするのが防犯に効果的です。

不安な方は今売却するのがおすすめ!

ここまで、太陽光発電所のケーブル盗難被害と盗難対策について解説してきました。

ケーブルの盗難にあうと、太陽光発電所の稼働を停止せざるを得ません。売電収入がゼロになる上に、現状では盗難被害に保険が効かなかったり免責金額があったりと事業者の出費が大きくなるケースがほとんどです。しかも、太陽光発電所として、また事業者として社会的な信頼を損なうという被害も受けます。

このような被害を受けないようにするためには、これまで述べてきたような盗難対策が必要です。しかしながら、太陽光発電所(産業用太陽光発電所)の施設は狭いわけではありません。それなりに大きいため、盗難対策するにも費用や時間、手間がかかります。近年は窃盗犯のやり口が巧妙化したり乱暴なものになったりしています。そのため、盗難対策しても盗難を完璧に防ぐことは難しいといえるでしょう。

事業者様の中には「そこまで盗難対策をしてもだめなのか」「盗難対策にそこまで費用を出せない」「盗難対策までして太陽光発電所を運営する気がしない」などお考えの方もいらっしゃるでしょう。

このように盗難対策をするのに不安がある事業者様、売却を検討してはいかがでしょう?実は、近年中古の太陽光発電所の人気が高まっています。特に低圧の太陽光発電所は、新規物件がないため人気が高い状態です。2019年に低圧FIT太陽光発電所(50kw未満)の全量売電の新規認定が終了し、余剰売電しか認められなくなりました。その影響で、低圧の産業用太陽光発電所が新しく作られなくなったため、中古の人気が高まっています。今が売却のチャンスといえるでしょう。

2024年再エネ特措法改正により、太陽光発電所(産業用太陽光発電所)を運営する事業者には「説明会等のFIT/FIP認定要件化」という新たな義務が生じました。また、2024年にパワコンの交換時期を迎える太陽光発電所も多く、「出力制御(出力抑制)」による利益の減少も懸念されています。時間や手間がかかる義務が増えた上に支出が増えて利益が減少するという、事業者にとって非常に好ましくない状況です。

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さらに、今後太陽光発電所の売却価格が下落する可能性もあります。これは太陽光発電所の売却価格が残りFIT期間により変わるためです。太陽光発電所の売却相場は、大まかですが以下の計算式で算出することができます。

売却価格=残りFIT期間の総売電収入÷2

例えば、年間の売電収入が300万円であり、FIT期間を10年経過している太陽光発電所の売却相場の計算式は以下の通りです。

{300万円×(20年-10年)}÷2=1500万円

すなわち、時間が経てば経つほど、残りのFIT期間が少なくなり、売却価格が下がってしまうのです。

これらのことを考えても、今が売却のチャンスといえるでしょう。

一口に売却といっても、いろいろな方法があります。事業者様ご自身で売却先を見つけ直接売却する方法や、専門の業者に仲介を頼む、買い取り自体を頼む方法もあります。直接売却もいい方法ですが、煩雑な事務作業などが多く慣れない事業者様には大きな負担がかかります。そこで、太陽光発電所の買取や仲介をする業者に一度相談してみてはいかがでしょう?

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太陽光発電の売却を検討されている方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

まとめ

関東近辺で起きていた太陽光発電所のケーブル盗難被害は、近年は中部地域をはじめ全国にも広がっています。

この記事を読んで、太陽光発電所のケーブル盗難被害と盗難対策への中部地域をはじめ全国の事業者様のご理解も深まったかと思います。

ケーブル盗難にあわないためには、盗難対策が必要です。しかしながら、盗難を完全に防ぐことは難しいといえます。窃盗の手口は、巧妙化したり乱暴な手段を使ったりとどんどん変わっていきます。その手口に対応して盗難対策をするのは事業者様にとっても大きな負担です。

そこで、盗難対策に不安がある事業者様、一度売却を検討してはいかがでしょう。

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この記事が、事業者様の盗難対策や今後の選択の手助けとなれば幸いです。

この記事の監修者

佐藤 稔(さとう みのる)

株式会社プレグリップエナジー 再エネ営業部

固定価格買取(FIT)制度開始以来、約10年にわたり太陽光発電所の開発・売買にたずさわり、1,000件以上の案件にかかわる。再エネ特措法をはじめ再エネ関連法令に精通しており、イレギュラーな案件での実績も豊富。発電所の買取では、お客さまごとのご要望に合わせた誠実な対応を心がけている。

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