産業用太陽光発電の売電収入は、太陽光発電の発電量によって決まります。発電量を事前に把握しておくことで、投資の見通しを立てることもできます。ではこの発電量の計算方法をご存じでしょうか?
本記事では、売電収入を把握するために必要な発電量の算出方法や、その発電量を下げる要因についてご紹介します。発電量を下げる要因についても事前に理解しておくことで、その要因を防ぐことができます。これから産業用の太陽光発電を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。
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産業用太陽光発電による発電量の算出方法
先述したように、太陽光発電の発電量を計算することによって、売電収入がいくらなのか計算することができます。その売電収入次第で、いつ太陽光発電の投資金額を回収できるのかの見通しを立てることもできるのです。
太陽光発電による発電量は、「システムの容量×日照量×システム出力係数(損失係数)」で計算することができます。どれも聞きなじみのない言葉だと思いますので、それぞれ詳しく説明していきます。
システムの容量
システムの容量とは、太陽光発電パネルで生み出すことができる電気の容量のことで、太陽光発電施設の大きさを表します。容量の単位はkWです。システム容量は、「公称最大出力×太陽光発電パネルの枚数」で算出が可能です。
公称最大出力とは、一定の条件のもとで太陽光パネル1枚あたりにどの程度の発電能力が有るかを示した値です。メーカーや製品によってこの値は様々です。
日照量
日照量は、太陽光発電パネルに届く太陽の日射エネルギー量を指します。季節や天候に左右されやすいのが特徴です。
日照量は、NEDOの日射量データベースで確認することができます。太陽光発電の設置地域、屋根の勾配・方角などを入力すると、推定日射量を調べることができます。
これから産業用太陽光発電の購入を検討している方は、日照量が高い地域を選ぶのがおすすめです。
システム出力係数(損失係数)
システム出力係数とは、太陽光発電の実際の発電量と、シミュレーション上の発電量の比です。太陽光パネルの出力は、一枚あたり約200Wとされています。しかし、パネルの経年劣化などによって、シミュレーションよりも発電ができないことがあります。その差を考慮するために、システム出力係数があります。
システム出力係数は「0.85」で計算するのが一般的ですが、こちらもメーカーによって様々設定されています。
産業用太陽光発電による発電量の算出例
太陽光発電の発電量の計算方法についてご紹介しました。ここでは実際の例を用いて、発電量を算出してみます。
ケース①
ケース①は、東京都で60kWのシステム容量を保有している場合の発電量です。
- システムの容量:60kW
- 日照量:3.67kWh/日(東京都)
- システム出力係数:0.85
以上のケースは、3.67kWh/㎡/日 × 60kW × 0.85=187.171kWh/日
年間にすると、68,317kWになります。
ケース②
ケース②は、東京都で80kWのシステム容量を保有している場合の発電量です。
- システムの容量:80kW
- 日照量:3.93kWh/㎡/日(北海道)
- システム出力係数:0.85
以上のケースは、3.93kWh/㎡/日 × 80kW × 0.85=267.24kWh/日
年間にすると、97,542kWになります。
産業用太陽光発電の発電量を下げてしまう5つの要因
産業用太陽光発電の発電量は、様々な要因でシミュレーションよりも下がることがあります。これを加味したのが先述したシステム出力係数です。
太陽光発電の発電量の低下、つまりシステム出力係数を引き下げる要因には何があるのでしょうか?具体的に5つご紹介していきます。
1. ソーラーパネルの汚れ
ソーラーパネルの汚れは、太陽光発電の発電量を下げてしまう一つの要因です。代表的な汚れとしては、鳥の糞があります。それ以外でも、埃や葉っぱでソーラーパネルに影ができてしまうと、その分発電量は低下してしまいます。
また部分的な汚れだとしても、発電量の低下はそのパネルを接続している回路全体に影響します。大幅な発電量低下を招くこともあるので、定期的にソーラーパネルのメンテナンスを行うのがおすすめです。
2. ソーラーパネルの温度上昇
ソーラーパネルの温度上昇も、発電量低下を招く要因です。ソーラーパネルの温度が上がると発電量が増えると思われがちですが、実はパフォーマンスが低下してしまうのです。これを熱損失といいます。
熱損失により、気温が25度から1度上がるごとに、発電量は0.5%低下します。気温40度であれば、7.5%も発電量が低下してしまいます。夏場の気温が高い地域にも注意をするようにしましょう。
3. ソーラーパネルの位置や角度
ソーラーパネルの位置や角度も、発電量に影響を及ぼします。一日の中で一番日射量が多くなるのは正午です。この時間帯に発電を集中させるのであれば、ソーラーパネルを南に向けるのがおすすめです。
また、東向きと西向きの2面にするという方法もあります。南向きと比べて正午の発電量は少なくなりますが、2面にすることで長時間発電をすることが可能です。南向きの1面がいいのか、東向きと西向きの2面がいいのかは、一度業者に相談してみるといいでしょう。
4. 発電装置の経年劣化
発電装置の経年劣化も、発電量に大きく影響します。太陽光発電は購入してから以下の数値で発電量が減少するといわれています。
- 10年:2.7%
- 20年:5.4%
- 30年:8.1%
メーカーによっては出力保証をしているところもあります。できるだけ保証があるものを選ぶと安心でしょう。
また定期的なメンテナンスも重要です。太陽電池の破損やパワーコンディショナの変換効率の悪化を直してくれるため、装置の劣化をある程度防ぐことができます。
5. 天候による影響
最後は天候による影響です。太陽光発電は太陽の光エネルギーで発電します。そのため、曇りや雨になると発電量は減少します。例えば曇りの日の発電量は、晴天時と比べて半分ほどになります。また、雨や雪の日のように雲がさらに厚くなる日には、ほぼ発電ができません。
天候に関してもアンコントローラブルな要因なため、先述した気温と同様に、事前に太陽光発電の設置予定地域の天候を確認しておくようにしましょう。
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まとめ
本記事では、太陽光発電の発電量の計算方法や、発電量を低下させる要因についてご紹介しました。
産業用の太陽光発電を購入する際には、検討地域の発電量を事前に計算することが重要です。そうすることで、投資金額の回収の見通しを立てることができます。また、その発電量を低下させてしまう要因を把握しておき、防げるものは防ぐようにしましょう。
この記事が購入を検討している人のお役に立てば幸いです。