太陽光発電を設置するにあたり、もっとも重要なのが発電量です。発電量が少ないと採算が合わなくなることがあります。そこで知っておきたいのが、「太陽光発電の平均発電量」です。
この記事では、太陽光発電の1日および年間の発電量をはじめ、地域別、季節別の平均発電量を紹介します。そのほか、発電量を増やすポイントについても解説しているため、これから太陽光発電を運用したい方、すでに運用しているが発電量をもっと増やしたい、という方はぜひ参考にしてください。
太陽光発電の平均発電量は?
太陽光発電の発電量は、一体どれくらいなのでしょうか。1日あたりの発電量と年間の発電量、それぞれの平均を見てみましょう。
太陽光パネル1日あたりの平均発電量
住宅の屋根に、太陽光発電「システム容量1kW」の太陽光パネルを設置している場合、1日の平均発電量は約2.7kWhになります。一般的な家庭用太陽光発電システムの発電容量は、3~5kW程度であるため、1日の発電量は8.1〜13.5kWhが目安です。しかしこれは、あくまでも目安であり、実際の発電量は太陽光パネルの性能や設置してあるエリアの気候により変動します。
太陽光パネル年間の平均発電量
太陽光パネルの年間発電量は、1年の間に太陽光から受け取るエネルギーの総量を指します。発電容量1kWの太陽光パネルの発電量は、年間でおよそ1,100kWhだといわれています。
そのため、4kWの太陽光パネルを設置すれば、一般家庭の平均年間電力消費量である5,000kWhの8割分を太陽光発電でカバーすることができるのです。
太陽光パネルの発電量は変動がある
太陽光パネルの発電量は、さまざまな条件によって変動します。
主な条件は以下のとおりです。
- 天候
- 設置位置
- 太陽光パネルの性能
- 太陽光パネルの手入れの有無
それぞれ詳しく解説します。
天候による影響
太陽光パネルの発電量は、太陽光が少ない曇りの日や雨の日は発電量が少なくなり、雪で太陽光パネルが覆われてしまうと発電できなくなる可能性があります。たとえ天気がよくても、気温が高くなりすぎると発電量は減少します。これは、太陽光パネルが高温に弱いことが原因で、気温が25℃以上になると発電効率が下がってしまうためです。そのため、日照量が多くても気温が高い夏は発電量が少なくなります。
設置位置などの条件による影響
太陽光の設置位置、および設置角度も発電量に影響を与えます。一般的には、直射日光を多く受ける南向きに設置することが多いでしょう。また、角度は30度くらいが理想とされています。しかし、周囲の環境や地形、設置場所によって理想的な位置と角度は異なります。
太陽光パネルの性能による影響
同じ発電容量の太陽光パネルでも、変換効率により発電量は異なります。変換効率が高い太陽光パネルのほうが、発電量は高くなるでしょう。しかし、変換効率が高い太陽光発電パネルはその分高額となるため、コストパフォーマンスをしっかり比較して選ぶことが大切です。
太陽光パネルの手入れによる影響
太陽光パネルが汚れると日光を受け取る量が減少するため、発電量がおよそ1~5%落ちるといわれています。発電量を維持するには、定期的な手入れが必要です。
とくに花粉や黄砂がよく飛ぶ時期や、海に近いエリアに太陽光パネルを設置している場合は小まめなメンテナンスが必要です。
太陽光パネルの地域別発電量の目安
環境省が発表した「令和元年度再生可能エネルギーに関するゾーニング基礎情報等の整備・公開等に関する委託業務報告書」によると、全国の主な都市の平均日射量と1kWあたりの年間予想発電量は以下のとおりです。
各地の年平均日射量と年間予想発電量
都市名 | 年平均日射量(kWh/㎡) | 発電容量1kWあたりに対する年間予想発電量(kWh) |
札幌 | 3.58 | 1.150 |
仙台 | 3.61 | 1.160 |
東京 | 3.53 | 1.134 |
名古屋 | 3.98 | 1.278 |
金沢 | 3.48 | 1.118 |
大阪 | 3.76 | 1.208 |
広島 | 3.99 | 1.282 |
高松 | 3.97 | 1.275 |
福岡 | 3.84 | 1.233 |
那覇 | 4.06 | 1.304 |
出典:環境庁「令和元年度再生可能エネルギーに関するゾーニング基礎情報等の整備・公開等に関する委託業務報告書」48Pより抜粋
表を見ると、札幌や金沢など日本海側の地域は日照量が少ないため、太平洋側の地域と比べると年間予想発電量も少ないことがわかります。また、沖縄の日照量が予想より少ないのは降雨量が多いことが要因と考えられます。
これらの発電量は、あくまでも目安です。さまざまな要因により同じ地域内でも日照量や発電量が多くなったり、少なくなったりすることがあると考えておきましょう。
太陽光パネルの季節別発電量の目安
続いて、太陽光パネルの季節別発電量を紹介します。前述したとおり、気温が高くなりすぎても発電量は減少するため、発電量がもっとも多い季節は8月ではありません。
一例として、神奈川県小田原市のホームページに記載されている、小田原市役所庁舎に設置された太陽光パネルの令和4年4月~令和5年3月までの日照量と発電量の推移を紹介します。
小田原市役所にある太陽光発電システム(60kW)の令和4年度日照量および発電量の推移
月 | 日照量(kW・h/㎡) | 発電量(kW・h) |
4月 | 4.117 | 180.9 |
5月 | 4.864 | 210.7 |
6月 | 4.376 | 197.2 |
7月 | 4.525 | 207.9 |
8月 | 4.111 | 187.6 |
9月 | 3.889 | 173.6 |
10月 | 2.907 | 123.8 |
11月 | 3.019 | 121.9 |
12月 | 2.917 | 114.9 |
1月 | 3.132 | 120.4 |
2月 | 3.57 | 143.2 |
3月 | 2.885 | 120.4 |
※小田原市「令和4年度市役所に設置された太陽光発電システム(60kW)の日別の発電量と日射量」のデータより、各月の日射量・発電量の積算値を日数で割ったものを記載
上記の表からわかるとおり、発電量がもっとも多いのは5月で、8月・9月は発電量が減少しています。理由は、太陽が照り付ける夏場は太陽光パネルの温度が70℃以上になり、太陽光パネルの出力が落ちてしまうためです。一方、十分な日射が確保でき、なおかつ温度が上がりにくい春から初夏にかけては発電量が増加します。
太陽光発電の発電量の算出方法
太陽光発電の発電量は、「システム容量 × 日射量 × 損失係数(0.85)」で計算可能です。システム容量とは発電可能な容量を意味し、発電設備の規模を表しています。システム容量の単位はkWです。
日射量は太陽から放たれたエネルギーの量、つまり、太陽光パネルに当たる太陽光を意味します。損失係数は太陽光のエネルギーを電力に変えるときに起こるロスのことです。損失係数は太陽光パネルの変換効率や気温など、さまざまな要因に左右されます。
太陽光発電を運用する際に、発電量の計算方法を把握しておくことは非常に重要です。発電量を計算することで、実際に稼働した際にどれだけ発電できるかをあらかじめ推測できます。推定発電量がわかれば、どれくらいの経済的メリットがあるか、ある程度イメージできるでしょう。
太陽光発電の収支シミュレーション
太陽光発電で得られる収入は以下の2つです。
- 売電収入
- 消費税還付
売電収入は、「固定買取価格(FIT価格) × 発電量(kWh)」で算出できます。固定買取価格(FIT価格)とはFIT制度によって定められた金額を指し、認定された年の金額に準じます。FIT制度における2024年度の売電価格は9.2〜16円/kWhで、発電設備の規模により異なります。2025年度(令和7年度)の予想売電価格は、8.9〜15円/kWhです。以下の例で年間の売電価格をシミュレーションしてみましょう。
- 発電規模50kW
- FIT認定年2024年
- FIT価格10円
年間発電量の目安を1kWあたり1,100kWhとした場合、上記の条件の売電収入は「10円×50kW × 1,100kWh = 55万円」となります。
太陽光パネルのもうひとつの収入が、消費税還付です。消費税還付は、受け取る消費税の額より支払う消費税の額のほうが多い場合に、差額を還付してもらえる制度です。消費税還付を受けるには、以下の2つの条件を満たす必要があります。
- 消費税課税事業者選択届出書を提出している
- 課税売上高が1,000万円を超える事業者である
一方、太陽光パネルを運用する際は以下の費用がかかります。
- パネル・土地代・周辺設備などの初期費用
- メンテナンス費用・保険料・ローン・固定資産税などのランニングコスト
これらの収入と支出のほか、日照時間やパネルの経年劣化などの要因も考慮して、収支シミュレーションをしましょう。収支シミュレーションは上記の収支と支出の項目を手動で計算するほか、太陽光パネルの収支シミュレーション計算ソフトを使う方法、太陽光発電設置業者に依頼するなどがあります。
太陽光パネルの発電量を増やす3つのポイント
太陽光パネルの発電量を増やすためのポイントは以下の3つです。
- 設置方位や設置角度を調整する
- メンテナンスを怠らない
- 発電量を定期的にチェックする
それぞれ詳しく解説します。
設置方位、設置角度を調整する
太陽光発電の発電量を上げるには、太陽光パネルの設置方位や設置角度を調整します。一般的に、発電量を高める適切な設置方位は「南」とされています。太陽が1日でもっとも高い角度になるのが南になるため、その状態で太陽光パネルが日射を受ければ、発電量が最大となるのです。
また、設置角度も重要なポイントです。日本で太陽光パネルの発電量を高めたい場合、適切な設置角度の目安は20~30度だといわれています。
とはいえ、設置する地域や場所により適切な方位や角度は異なるため、事前に適切な設置場所を確認しておきましょう。なお設置する際は、実績が豊富な専門業者に相談すると安心です。
メンテナンスを怠らない
太陽光発電は経年劣化により太陽光モジュールの発電効率が落ちるため、定期的なメンテナンスが必要です。仮にメンテナンスを行わず使用した場合、設置後10年で発電効率は90~95%にまで低下するといわれています。20年間メンテナンスを行わないと発電効率は85~80%まで低下する可能性があり、発電量の低下に影響します。
また、太陽光発電設備のパワーコンディショナーがホコリやゴミなどで目詰まりを起こすと故障につながります。パワーコンディショナーが故障すると発電量が急激に低下し、ヒューズ切れを起こす可能性があります。このほか、太陽光パネルに汚れが蓄積することも発電量低下につながります。
太陽光発電は非常に性能が高く、壊れにくい設備です。しかしながら、長期間安定した発電量を維持するには一定のメンテナンスが必要です。メンテナンスは自己流で行うのではなく、専門の資格を有する専門の技術者や業者に依頼しましょう。
発電量を定期的にチェックすることも大切
小まめに発電量を確認することも重要です。定期的に確認することで発電量の低下に気づき、故障などのトラブルの早期発見につながります。また、発電量が減少したときに素早く対応できるでしょう。
発電量を簡単にチェックするには、発電量モニターの記録データを活用するとよいでしょう。記録データで発電量の推移を確認すれば、季節や気候、時間による発電量の変化が把握できます。また、設備の劣化や故障、外部環境による影響など、発電量減少の要因の発見も容易になるでしょう。
発電量モニターの設置は必須ではありませんが、設置しておいたほうが発電量の減少防止対策につながります。
まとめ
この記事では、太陽光発電の平均発電量がどれくらいなのか、地域別・季節別に紹介するとともに、発電量の増減を左右する要因、発電量が減少する原因を解説しました。太陽光発電の発電量を増やすには適切な方位や角度に設置し、継続的にメンテナンスを行うことが必要です。
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