出力抑制は増える?2024年度実績と最新の2025年度見込みを九州電力管内を例に解説

出力制御は増える?2024年度実績と最新の2025年度見込み

近年、太陽光発電において出力抑制が実施されており、高い水準で推移しています。FIT事業者は再エネ特措法に基づき出力抑制を拒否できません。多くの事業者がFIT事業者認定されているため、出力抑制により多くの事業者の売電収入が減少しており大きな課題です。

そこで、この記事では、太陽光発電における出力抑制について詳しく解説します。また、九州電力管内の出力抑制の流れを参考にして、2025年の全国の出力抑制の最新見込みも解説します。売電収入の減収に悩む事業者様、出力抑制を改めて理解し、出力抑制の最新情報を2025年の太陽光発電所の経営にお役立てください。

目次

太陽光発電の出力抑制とは何か?背景と仕組み

太陽光発電の出力抑制とは、簡単に言えば電力会社が太陽光発電所の発電を一時的に制限することです。発電を制限されてしまうと、当然のことながら太陽光発電事業者の売電による収入が減ってしまいます。

太陽光発電所の多くの事業者は、残念ながら出力抑制を拒否できません。ただし、出力抑制での減収を救済するための補償ルールはあります。

この章では、太陽光発電の出力抑制について解説し、この制度ができた背景と仕組み、事業者への補償ルールについて解説します。

出力抑制はなぜ必要?

産業や生活を安定して営むためには、電力システムの安定した稼働が必要です。もし、電力システムが不安定になると産業や人々の生活に様々な支障が生じます。

実は、電力の需要と供給は「同時同量」の原則で管理されています。「同時同量」とは、電気の供給量(発電量)と電気の需要(消費量)が同じ時に同じ量になっていなくてはならないということです。

もし、需要と供給のバランスが崩れると、電力システムが不安定になります。特に電力の供給過多が起こると、電力網の電圧および周波数に異常が起こりやすくなり、事態は深刻です。その結果、電子機器の故障あるいは自動停止が頻繁に起こる可能性があります。

さらには、安全装置が発動して発電所の停止につながりかねません。これにより、予測不能な大規模停電を招く可能性もあります。2018年9月の北海道全域のブラックアウトは、電力の需要供給バランスが崩れたために起こりました。

このような事態を避けるために出力抑制が必要です。

出力抑制は断れない?

電力の需要供給バランスを保つための出力抑制は太陽光発電だけでなく、火力発電(ガス、石炭、石油)やバイオマス発電などでも行われます。

引用:経済産業省 資源エネルギー庁 エネこれ「再エネの発電量を抑える「出力制御」、より多くの再エネを導入するために」(https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/kyushu_syuturyokuseigyo.html)

図に示すように、最初に出力抑制されるのは、火力発電です。同時に、揚水水力発電の調整も実施されます。続いて、他地域への電力送電(連係線利用)が実施され、さらにバイオマス発電の出力調整が行われるのです。

それでも発電を抑えなければならない場合は、太陽光発電および風力発電の出力抑制が要請されます。

なお、出力抑制は出力制御とも称されます。

太陽光発電の出力抑制の順位は低いものの、近年は多く出力抑制が実施されているのが実情です。これだけ順位が低いのだから断ってもいいと思う方も多いでしょう。しかし、残念ながら、出力抑制は断れません。

これは、FIT事業者は出力制御の要請には法的に従う義務があると再エネ特措法で決められているからです。FIT事業者として認定し続けてもらうためには、義務を順守しなくてはなりません。

2021年3月以前に電力受給契約の申込みを終えていてFITの事業計画認定を受けている事業者には、出力規模や設置場所、さらに電力受給契約の申込み日或いは締結日に基づいて3つの補償ルールのうちのいずれかが適用されます。なお、3つの補償ルールは、旧ルール、新ルール、無制限・無補償ルール(指定ルール)です。FIT以外の太陽光発電所は無制限・無補償ルールになります。補償ルールについては、のちほど解説します。

2021年4月以降に新たに一般送配電事業者と電力受給契約の申込みを行っており、太陽光発電所を建設する事業者には、無制限・無補償ルールが適用されます。このルールに基づいて出力抑制に応じなければなりません。

補償ルールとは?

出力抑制により太陽光発電事業者の売電収益が減収してしまうため、太陽光発電事業者に対しての補償ルールがあります。ただし、FIT事業者以外の太陽光発電所はいずれも無制限・無補償ルールの対象です。

補償ルールは以下の3種類です。

・旧ルール(30日ルール)

・新ルール(360時間ルール)

・無制限無補償ルール(指定ルール)

順番に解説します。

旧ルール(30日ルール)

旧ルール(30日ルール)は、年間の出力制御日数が30日を超える場合に適用されるルールです。30日目までは出力抑制に応じても補償はなく、31日目以降は補償されます。

新ルール(360時間ルール)

2015年にFIT制度(固定価格買取制度)が改定されたことに伴い、「360時間ルール」が新たに導入されました。旧ルール(30日ルール)と異なる点は時間でカウントすることです。

旧ルール(30日ルール)では、その日のうちに何時間出力抑制があったかに関わらず出力抑制があれば1日としてカウントしていました。一方、新ルール(360時間ルール)では、時間単位でカウントされるため、運用の精度が高まりました。

無制限無補償ルール(指定ルール)

無制限無補償ルール(指定ルール)は、先ほどの新ルール(360時間ルール)の後に制定されたもので、出力抑制に対する補償がないものです。つまり、出力抑制に応じても全く補償はありません。

補償ルールについての注意

補償ルールについては注意点があります。太陽光発電所の設置地域によって管轄電力会社が異なり、電力会社エリアごとに補償ルールの適用範囲が異なることです。

電力会社エリアによって、各補償ルールに対応する接続申込日、出力規模が異なるため、同じ条件でもエリアによって補償の内容が変わることがあります。この点は注意が必要です。

2025年度の出力抑制は?

出力抑制がどういうものなのか、なぜ必要なのか、補償されるのかがお分かりいただけたと思います。続いて、気になる2025年の出力抑制の傾向についてみていきましょう。

実は、2025年も変わらず高い水準で出力抑制が行われるといわれています。まずは、他のエリアよりも早い年に出力抑制を行った九州電力の推移をみてみましょう。

九州電力管内の出力抑制の推移

九州地方の物理的特性や気候条件は非常に太陽光発電に向いており、他の地域よりも太陽光発電の導入が進んでいます。太陽光発電に向いているため発電効率がよく、太陽光発電所が増えれば総発電量が大きくなります。そのため、他の地域よりも早い年に出力抑制が始まりました。

九州電力管内における出力抑制の推移は、以下の表のとおりです。表では出力抑制率と出力抑制量を示します。

参考:2024年3月11日 経済産業省 資源エネルギー庁「再生可能エネルギーの出力制御の抑制に向けた取組等について」(https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/shoene_shinene/shin_energy/keito_wg/pdf/050_01_00.pdf )

表を見てわかるように、2024年は前年よりも出力抑制率と出力抑制量ともに、少し低下していますが、6.1%と変わらず高い水準で推移しています。

なお、2024年においては、「50.7回」の出力抑制が実施され、日ごと最大出力抑制率は「36.31%」、最大出力抑制量は「4,097MWh」となっております。

つまり、太陽光発電所の事業者としては、本来得られるはずの売電収入が大きく減っているといえるでしょう。

九州電力管内の2025年の出力抑制予定は?

九州電力送配電(株)の「2025年度出力制御見通しについて」によると、2025年の出力抑制見込みは、太陽光・風力合わせて6.1%で10.4億kWh、太陽光発電は6.2%とされています。

すなわち、2025年も2024年と変わらず高い水準で出力抑制が実施される見込みです。

参考:2025年1月23日九州電力送配電(株)「2025年度出力制御見通しについて」(https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/saisei_kano/smart_power_grid_wg/pdf/001_s01_08.pdf )

他の管轄にも広がる出力抑制

先ほども申し上げましたが、九州地方は太陽光発電に適した地域であり、太陽光発電所の数も多い地方です。電力需要の点で見ると、九州地方は全国の約10%程度です。しかしながら、太陽光発電の導入量は1000万kWを超えており、全国の約17%を占めています。これらの点から出力抑制が多い地域といえ、ほかのエリアよりも早い年に出力抑制が行われました。

ところが、出力抑制は他の地域にも広がっています。2025年1月23日資源エネルギー庁「再生可能エネルギーの出力制御に関する短期見通し等について」によると、年々実施範囲が徐々に拡大されています。実施年と実施エリアとの関係を以下の図に示します。

参考:2025年1月23日資源エネルギー庁「再生可能エネルギーの出力制御に関する短期見通し等について」(https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/saisei_kano/smart_power_grid_wg/pdf/001_02_01.pdf )

図を見てわかるように、2022年からは北海道エリア、さらには東北、四国や中国の各エリアで実施されました。2023年には中部、関西、沖縄にまで拡大しており、東京電力を除く国内のほぼ全域で実施されました。2025年には東京電力でも出力抑制を実施する見込みです。

つまり、2025年は出力抑制がどの地方でも要請される見込みで、どの地方の太陽光発電所の事業者も売電収入が減少する可能性があります。

出力抑制が増える理由

出力抑制は、全国的に増加する傾向です。その年の気候や太陽光発電所の数の増加によっても出力抑制は増加しますが、以下のような理由でも増加します。

1.節電意識の高まり

2.再エネの増加

3.他地域への送電量の減少

順番に解説します。

節電意識の高まり

近年の電気料金の高騰により企業や個人の節電への意識が高まっています。特にウクライナ情勢の影響は深刻です。電気料金は益々高騰しており、企業や個人の電力需要の減少が起きています。

電力の供給と需要のバランスは「同時同量」で管理されており、需要が減れば当然必要な供給量が減ります。このことから、出力抑制の量および機会の増加は必須です。

再エネの増加

再生可能エネルギーは今や世界規模で取り入れられています。日本では、東日本大震災を契機に脱原発の動きが加速しました。さらにはカーボンニュートラルも進められています。

このような時代背景もあり、太陽光発電を含む再生可能エネルギーの導入が増えてきました。つまり、太陽光発電所などが増え、発電可能な総発電量が多くなっています。

先ほど申し上げたように、電力は「同時同量」で管理されています。電力需要が多くバランスがとれている時は問題ありません。しかし、ゴールデンウィークのように長期で産業が休止するような場合には電力需要が低くなり、発電量が過多になってしまいます。そこで、全国的な出力制御が実施されるようになりました。

他地域への送電量の減少

先ほど申し上げたように、出力抑制には順番があります。1番目の火力発電および揚水水力発電の調整は実施可能です。しかしながら、2番目の他地域への送電による出力抑制が困難となっています。

これは、各地域においてある程度のげんげんkを確保できるようになり、需要が低いときにはどの地域でも他の地域からの送電を必要としないからです。結果として、2番目の他地域への送電による出力抑制が困難となり、3番目の太陽光発電や風力発電の出力抑制の量が増加しています。

2025年出力抑制が減ることはない見込み

これまで述べた3つの理由が急に解消することはありません。そして、全国において同じ傾向です。つまり、全国的に2025年に出力抑制が減ることはないといえます。

【2025年】出力抑制は全国的に高い水準で推移

これまで述べたように、比較的早くから出力抑制を実施していた九州電力の管轄だけでなく、他の地域にも出力抑制が広まっています。2025年には、出力抑制は全国で実施される予定です。

その上、先ほどの章で解説したように、「1.節電意識の高まり」「2.再エネの増加」「3.他地域への送電量の減少」が解消することはなく、全国的に出力抑制が増える傾向が続いています。

従って、2025年は、出力抑制が全国的に高い水準で推移するでしょう。

太陽光発電事業者が受ける影響

2025年も出力抑制が全国的に高い水準で推移するため、太陽光発電事業者の売電による収益が大きく減ってしまう傾向にあります。この傾向は、情勢を鑑みると当分続くといえるでしょう。

出力抑制による減収を少しでも減らす方法としては、出力抑制を自動(オンライン)で制御できるシステムの導入があります。オンラインで遠隔制御できる太陽光発電所のメリットは、現地に人員が赴いて制御するオフラインの太陽光発電所よりも出力抑制量を低減できることです。

ただし、2015年1月26日以降に接続申し込みした太陽光発電所では、このシステムの導入が義務化されています。これは、先ほどの補償ルールの項で述べた360時間ルール(新ルール)が適用されている太陽光発電所にあたります。

それ以前の太陽光発電所、先ほどの補償ルールの項で述べた30日ルール(旧ルール)が適用されている太陽光発電所には設置義務がありませんでした。このような太陽光発電所がシステムを導入する場合の機器を追加設置する費用は、太陽光発電所の事業者が負担しなくてはなりません。

2021年11月12日一般社団法人太陽光発電協会「太陽光発電のオンライン制御化に向けた課題」(https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/shoene_shinene/shin_energy/keito_wg/pdf/033_03_00.pdf  )では、30日ルール(旧ルール)が適用されている太陽光発電所がオンライン制御に対応するための初期費用の目安としては、「高圧の設備においてはおよそ200万円~600万円、特別高圧の設備に2000万円~4000万円程度と推定する」されています。太陽光発電所の事業者にとっては大きな出費であり、出力抑制で売電収入が減少する事業者にとっては大きな影響です。

太陽光発電所にはパワコン交換時期を迎え、支出が大きくなる事業者もいます。2012年にスタートした産業用太陽光発電の全量売電制度(FIT制度)を利用して、多くの産業用太陽光発電所が事業を開始しました。2024年には、これら多くの産業用太陽光発電所が11年目を迎えパワコンの交換時期となります。パワコンの交換で費用が掛かるうえに出力抑制で売電収入が減少するのは事業者にとっては大きな痛手です。

FITの期間は、住宅用太陽光発電(出力10kW未満)の場合は10年間、事業者が設置する産業用太陽光発電(出力10kW以上)の場合は20年間です。FIT期間が終了した後は、新たな契約などを結んで事業を続けることとなります。この場合、FIT期間と同様の売電収入が得られるとは限りません。このような事業者にとって、出力抑制のために売電収入が減収するのは大きな問題です。

出力抑制により売電収入が減ることは、太陽光発電所の事業者にこのように大きな影響を及ぼします。収支のバランスによっては、事業を続けるかどうか悩む事業者もいるでしょう。

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まとめ

九州電力管内から始まった出力抑制は次第に範囲を広げ、2025年にはすべての電力会社管内で実施される見込みです。

FIT事業者は再エネ特措法により出力抑制を拒否することはできません。そのため、多くの事業者が出力抑制により売電収入の減少を余儀なくされるでしょう。

しかも、諸々の事情から2025年も高い水準で出力抑制が要請されることは明らかです。どの地方の太陽光発電所においても出力抑制による売電収入の減収は避けられません。

その上、出力抑制による減収を減らすべくシステム化の装置を追加設置する費用は事業者が負担しなくてはなりません。出力抑制の減収と設備の費用で事業者への影響は非常に大きなものとなります。

事業者の中にはパワコンの交換時期を迎える事業者やFIT期間が終了する事業者もいます。このような事業者にとっては、出力抑制による減収は深刻な問題です。

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