太陽光発電の耐用年数と国が定める「法定耐用年数」は全く異なり、それぞれの言葉について理解する必要があります。法定耐用年数は出力別に設定されており、設備が故障するまでの耐用年数と区別する必要があります。
そこで今回は、実際に使える耐用年数と法定耐用年数の違いについて解説します。太陽光発電の劣化する原因や長期的に使用する方法なども紹介するため、太陽光発電の導入を検討している方はぜひ参考にしてください。
太陽光発電は国税庁により「法定耐用年数」が定められている
太陽光発電は、国税庁により法定耐用年数が定められています。法定耐用年数は、太陽光発電の使用できる一般的な耐用年数とは異なります。一般的な耐用年数は設備の寿命を指すことが多いですが、法定耐用年数は減価償却を行うための耐用年数のことを指します。したがって、法定耐用年数は太陽光発電の寿命のことではなく、税制を計算するうえで必要な年数と認識しましょう。
法定耐用年数は、資産の項目ごとに定められています。減価償却は、個人の判断で償却期間を設定することはできません。減価償却期間を個人の判断で設定できると、税制上で不平等が生じるため法律により定められています。
太陽光発電の法定耐用年数は『17年間』
資産により法定耐用年数が異なりますが、太陽光発電の法定耐用年数は17年間と省令により決められています。法定耐用年数の17年を過ぎたとしても設備の寿命ではないため、故障していなければまだまだ太陽光発電で発電できます。
法定耐用年数は税制上の計算をするうえで必要な表記であり、実際の設備の寿命とは異なることを理解しないと、所得税や減価償却を計算できません。
法定耐用年数は出力別に設定されている
法定耐用年数は、出力別に設定されています。太陽光発電の出力によっては法定耐用年数が適用されない場合があるため、適用される基準を知っておく必要があります。具体的に、どのような太陽光発電が法定耐用年数の対象になるかを解説します。
出力10kW未満は適用なし
出力10kW未満は、法定耐用年数の適用はありません。したがって、住宅用として設置している太陽光発電は法定耐用年数や減価償却について考える必要はありません。しかし、住宅用として設置した太陽光発電で出力10kW以上のものについては、法定耐用年数の対象です。その場合は、一定期間の決められた減価償却期間で費用を計上しなければなりません。
出力10kW以上の産業用は適用される
出力が10kW以上の太陽光発電は、法定耐用年数が適用されます。太陽光発電の法定耐用年数は17年と決められていますが、複数の用途として運用する場合は、ほかの耐用年数が適用されることもあるため必ず確認をしてください。
出力10kW以上の産業用太陽光発電として運用する場合は、法定耐用年数や減価償却を理解してきちんと経理を計算する必要があります。適切に税金を納めないと、追加で税金を納める必要が生じるかもしれません。
きちんと減価償却を行うと、太陽光発電の経費として節税できます。太陽光発電の初期費用は高額なため、購入費用を減価償却しないと大きく損をします。
法定耐用年数が定められている理由とは?
法定耐用年数が定められている理由は、税制上の計算を明確にするためです。減価償却を行うには、資産ごとに法定耐用年数を定める必要があります。たとえば、太陽光発電の耐用年数を2年とした場合は、償却期間を2年で計算でき、人により償却期間に違いが生じます。法定耐用年数を定めると、資産ごとに定められた期間で分割計上するため、減価償却での不平等さは生じません。
高額な資産は一括計上できないため、減価償却を行って分割計上するのが一般的です。きちんと分割計上するために、資産ごとに法定耐用年数が定めていると考えればよいでしょう。
産業用であれば確定申告で減価償却が可能
産業用の太陽光発電を購入した場合は、発電量が10kWを超えるため確定申告で減価償却が可能です。減価償却は経費として節税対策になるため、産業用の太陽光発電を購入する方は、減価償却で経費を計上することをおすすめします。減価償却には定額法と定率法などのやり方があり、どちらを選択するかは企業が選べます。
定額法で減価償却する場合は、毎年一律の金額を収入から償却していきます。毎年一律に減価償却するため、毎年の償却する金額がわかりやすいメリットがあります。産業用の太陽光発電を個人事業主として運用している方は、定額法で減価償却する場合があります。
定率法で減価償却する場合は、償却する割合を変更できます。毎年の償却率を25%などのように設定しておくことで、運用初期の利益を圧縮できるメリットがあります。太陽光発電を設置する時期に、ほかの事業の利益などがある場合は定率法を選択するケースが多いです。ほかの事業の売り上げを太陽光発電の設置費用で償却できるため、どちらを選択するかは太陽光発電を設置する年の収入で判断するのがよいでしょう。
『法定耐用年数』=『太陽光発電の寿命』ではない
前述したとおり、法定耐用年数と太陽光発電の寿命は、同じではありません。太陽光発電の設備によっても寿命が異なり、メーカーの提示する耐用年数で太陽光発電の寿命を考える必要があります。太陽光発電の法定耐用年数は17年ですが、実際の太陽光発電の寿命は30年程度といわれています。適切に使用してメンテナンスを怠らなければ、30年以上も長期的に使用できます。
しかし、太陽光発電は設備の部品ごとに耐用年数が異なるため、それぞれの部品のおおまかな耐用年数を知っておきましょう。故障した場合は部品や設備の交換が必要になり、新しく交換すると寿命が延びます。実際に使用できる年数は生産しているメーカーにより異なり、おおよそどれほどの太陽光発電を使用できるかを購入前に確認してください。
中古の太陽光発電を購入する際は、太陽光発電の状態を確認しましょう。中古の太陽光発電は、前オーナーの使用方法によっては大きく傷んでいる可能性があります。中古の太陽光発電を購入する際は、発電量の計測値を確認したり現地で実際に状態を確認したりして、どのくらい使用できるかを事前に確認しておかなければいけません。太陽光発電の状態を確認せずに即決すると、すぐに故障する可能性があります。
太陽光発電は、実際何年くらい使えるのか?
太陽光発電の設備ごとに寿命は異なります。ここでは太陽光発電の設備ごとに分け、実際に使用できる耐用年数について説明していきます。
太陽光パネルは20~30年
太陽光パネルは、20年~30年の期間使用できるといわれています。太陽光パネルはパワーコンディショナーと比べると壊れにくく、長期的に使用できます。太陽パネルのパネル部分は壊れやすいシリコン素材を使用しますが、パネルを損傷しないように耐久性の優れた保護材でパネルを覆うため、太陽光パネル本体は壊れにくいです。
しかし、太陽光パネルは環境や設置状況により寿命は大きく変わります。たとえば、海に近い場所に太陽光発電を設置すると塩害対策を行う必要があります。また、紫外線によっても劣化や腐食を進行させる場合があるため、設置方法や対策を考えなければいけません。
太陽光パネルは耐久性の優れた保護材で覆われていますが、強い衝撃などを与えるとパネルは破損します。とくに災害などで、大きな岩などが落石すると簡単に壊れます。地震などによる落石などは予測できないため、太陽光パネルが壊れたときの対応として保険には必ず加入しましょう。
太陽光発電を運用する際の保険は、火災保険だけでなく自然災害が起こった際に対応できる保険にも加入することをおすすめします。火災保険に追加オプションとして自然災害の保険を付けられる場合があるため、保険内容を確認して加入してください。
パワーコンディショナーは10~15年
パワーコンディショナーの実際の耐用年数は、10年~15年といわれています。パワーコンディショナーは、内部の電子部品や放熱ファンなどがとくに劣化しやすいです。メンテナンスを業者に依頼した際に、放熱ファンの状態などは確認してくれます。多くのメーカーでは、パワーコンディショナーの修理の保証期間を10年としていることが多いです。保証期間を延長したい場合は、追加で費用を支払うことで保証期間を15年や20年と延長できる場合があります。保証内容はメーカーにより異なるため、保証の追加プランなどを含めて業者を選びましょう。
ソーラーフェンスは20~25年
ソーラーフェンスの実際の耐用年数は、20年~25年といわれています。ソーラーフェンスは、構築物金属製のもの塀に該当するため、太陽光発電の法定耐用年数と異なるため注意が必要です。構造物金属製の耐用年数は、太陽光発電の法定年数と項目が異なるためソーラーフェンスの法定耐用年数は10年です。
ソーラーフェンスの法定耐用年数は10年ですが、実際に使用できる耐用年数は20年~25年です。適切に使用すると、それほど修理をしなくても長期間使用できるでしょう。
太陽光発電が劣化してしまう原因
太陽光発電を長く使うためには、劣化の原因を知らないと、寿命を大幅に縮めてしまう可能性があります。ここでは太陽光発電が劣化してしまう原因を3つ解説します。
塩害、積雪による環境要因
塩害による影響で、太陽光発電の寿命が縮まります。とくに海岸に近い地域では塩害対策を行う必要があり、塩害対策を行わないと錆びや腐食の原因になります。海岸から2キロメートル以内に位置する場所は、塩害地域に該当します。そのため、海岸に近い場所に太陽光発電を設定する際は、どのような塩害対策を行うべきかを確認する必要があります。
塩害被害は太陽パネルだけでなく、パワコンや架台にも影響を及ぼします。架台や太陽パネルでは錆びの原因となり、ひどい状態を放置すると倒壊する恐れがあります。また、パワーコンディショナーは精密機械なため、内部に塩分が侵入するとシステムが故障する場合があります。
塩害被害だけでなく、積雪により太陽光発電が劣化するケースもあります。太陽光パネルの上に雪がたくさん積もると、重さに耐えきれず倒壊や故障の原因につながります。架台の破損だけでなく、パネルにヒビが入ることもあるため、雪がよく降る地域では積雪対策が必要です。
塩害や積雪などの被害を防ぐには、太陽光発電の設置場所を事前に調べておく必要があります。被害を減らすために、海から近い場所での設置を避けたり、たくさん雪の降る豪雪地帯での設置を避けたりすると、塩害や積雪の対策は考えなくて済みます。太陽光発電の設置環境が悪い場所を選ぶと修理費や対策費が増えるため、総合的な利益が減少するかもしれません。
ホットスポットの発生
ホットスポットは太陽光パネルが割れたり、周囲の木や建物の陰に隠れたりすることで発生します。ホットスポットが発生すると、太陽光発電の劣化が進行します。劣化が進行するだけなく、場合によっては火災を引き起こす原因にもなるため注意が必要です。
ホットスポットが発生した場合は、早急に対応する必要があります。日ごろからメンテナンスを行い、発電量の異常を検知した場合は業者に調査を依頼するのが望ましいです。
層間剥離による影響
層間剝離が起こると、太陽光発電の劣化を早めます。層間剝離とは太陽光パネルのガラスやシートに粒子が侵入して、剥がれてしまう現象のことです。層間剝離は環境の状態により発生し、層間剝離が起こるとパネルの交換が必要です。
層間剝離が生じるとその部分からは発電できないため、太陽光発電の発電効率が下がります。部分的に層間剝離が生じた場合、ほかの部位も層間剝離になる恐れがあるため、定期的にメンテナンスを行って確認する必要があります。
太陽光発電を長く使うためにできること
太陽光発電を長期的に使用するには、適切な方法で運用する必要があります。塩害や積雪、ホットスポットなどは、適切な対策を行うと防げる場合があります。そこで、太陽光発電の寿命を長くするための注意点について解説します。
メンテナンスや点検を怠らない
太陽光発電の寿命を長くするために、メンテナンスや点検を定期的に行いましょう。定期的に専門業者にメンテナンスをお願いすれば、素人ではわからない設備の劣化をみつけてくれます。
ホットスポットや塩害などの被害は、早期に対応する必要があります。保守点検は法律で期間が定められていますが、行う頻度は具体的に決められていません。点検などは異常を発見するだけでなく、寿命を長期的にのばすことにつながるため、メンテナンスは積極的に行いましょう。
パワーコンディショナーの設置場所に注意する
パワーコンディショナーの設置場所にも注意しなければなりません。パワーコンディショナーがむき出しで屋外に設置してあると、塩害の被害により錆びやすくなります。室内に設置する際はブレーカーの近くに設置することが一般的ですが、設置するスペースの広さなどを確認して設置しましょう。
パワーコンディショナーは精密機械であるため、適切な温度や湿度の場所に設置しなければなりません。あまりにも気温が暑かったり寒かったりする場合は、パワーコンディショナーの寿命を縮めます。太陽光発電を設置する際は、ご自身の土地が適切な環境かどうかを確認してから設置しましょう。
発電データを定期的に記録し故障を素早く発見する
発電データを定期的に記録すると、故障した際に素早く対応できます。定期的にデータを記録すると、発電効率が著しく下がった場合でも何が原因で電力が下がったかを推測することが可能です。したがって、記録したデータを日々確認することが重要といえます。
また、太陽光発電の修理を依頼する際は発電データを求められることがあります。データを確認すると、いつから故障しているかなどが明確にわかるため、発電計測装置とパワーコンディショナーを連動させておきましょう。
フィルターやパワーコンディショナーの掃除をする
フィルターやパワーコンディショナーの掃除を行うと、太陽光発電の寿命を延ばせます。フィルターは、ごみを内部に侵入させない重要な役割を果たします。フィルターを定期的に清掃しないと換気効率が低下して、劣化を促進させます。ご自身で清掃できない場合は、業者に清掃を依頼しましょう。
まとめ
今回は、太陽光発電の耐用年数や法定耐用年数との違いについて解説しました。実際に使用できる耐用年数と法定耐用年数は異なり、法定耐用年数は減価償却するための年数として設定されています。
太陽光発電をきちんと運用すると、20年~30年ほどは使用できます。太陽光発電の劣化の原因を知ると適切な対応を行えるようになるため、耐用年数と法定耐用年数との違いも理解して太陽光発電を運用しましょう。