「水力発電のメリット・デメリットって何?」「そもそも水力発電はどんな仕組み?」などの疑問を抱えている方もいるのではないでしょうか?
この記事では、水力発電のメリット・デメリットをはじめとして、仕組みや種類などについてわかりやすく解説しています。
水力発電について理解を深めたい方、企業や自治体で再生可能エネルギーの導入を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
水力発電の仕組み
水力発電はまず、水が高いところから低いところへ流れる力を利用して、水車を回転させます。そして、水車の動力を電力に変換することで、電気を生み出す仕組みです。
電気を生み出す発電機には、火力発電や風力発電と同様に、電気誘導の原理が利用されています。電気誘導とは、導体を通過する磁場が変化すると、その導体に電圧が生じることです。
磁石をコイルの周りで回転させると、コイルを通る磁場が変化します。この変化により、コイル内に誘導電流が発生し、電気が生成されるのです。
水力発電の種類
水力発電にはいくつかの種類があり、構造物や水の利用方法によって分類されます。まず構造物によって分類すると、以下の3種類があります。
- ダム式:ダムを利用して発電する
- 水路式:河川から水路を引いて発電する
- ダム水路式:ダムと水路を利用して発電する
水の利用方法によって分類すると、以下の4種類です。
- 流れ込み式:河川の流れをそのまま利用する
- 調整池式:小さいダムに貯めて調整して利用する
- 貯水池式:大きいダムに貯めて必要な時期に利用する
- 揚水式:河川の上部と下部にダムを作り下部から引き上げて利用する
水力発電のメリット
水力発電のメリットは、以下の4つです。
・温室効果ガスを排出しない
・安定してエネルギーを供給できる
・発電効率が高い
・発電や管理のコストが安い
それぞれ具体的に説明していきます。
温室効果ガスを排出しない
水力発電のメリットは温室効果ガスを排出しないことです。地球温暖化の問題は年々深刻化しており、この問題を解決するために、温室効果ガスを排出しない再生可能エネルギーが注目されています。
水力発電は再生可能エネルギーの一つであり、太陽光発電や風力発電と同様に導入が促進されています。もし水力発電によるエネルギー供給が増えれば、大幅な温室効果ガスの排出削減につながるでしょう。
安定してエネルギーを供給できる
水力発電は安定してエネルギー供給ができることもメリットです。太陽光発電や風力発電は、天候などの外部環境に発電量が左右されます。一方で、水力発電は水があればいつでも発電可能です。
中でも揚水式であれば、電力の需要に応じて発電量を調整できます。安定してエネルギーを供給できることに加えて、発電量を調整できることも、水力発電が注目されている理由の一つです。
エネルギー変換効率が高い
水力発電は、他の発電方法と比べてエネルギー変換効率が非常に高いです。エネルギー変換効率とは、エネルギーを電気に変換できる割合であり、高いほど効率的に発電できることを表します。
水力発電の発電効率は80%であるのに対して、火力発電は55%、風力発電は25%、太陽光発電は15〜20%とされています。エネルギーを最大限活用できることも、水力発電のメリットです。
参考:再生可能エネルギーへの取組み 水力発電の概要|関西電力
発電や管理のコストが安い
水力発電は、発電や管理のコストが安いこともメリットとして挙げられます。例えば、化石燃料や原子力発電には、それぞれ燃料が必要です。対して、水力発電は水があれば発電できるため、燃料費がかかりません。
また、一度建設すれば、管理や維持にかかるコストも比較的安いです。発電や管理のコストが安いことから、自治体などで積極的に導入されています。
水力発電のデメリット
一方で、水力発電のデメリットは以下の3つです。
- 初期費用が高い
- 発電量が雨量に影響される
- 環境に悪影響を与える可能性がある
それぞれのデメリットについて見ていきましょう。
初期費用が高い
水力発電は、発電や管理のコストは安いものの、初期費用が高いことがデメリットです。具体的には、1kWあたり以下の費用が平均でかかります。
- 200kW未満:95万円
- 200kW以上1,000kW未満:135.3万円
- 1,000kW以上5,000kW未満:94.3万円
- 5,000kW以上30,000kW未満:33万円
太陽光発電の初期費用は1kWあたり16.2万〜24.7万円であることから、企業で再生可能エネルギーを導入する場合は、太陽光発電の方が初期費用を抑えられるでしょう。
ただし、補助金などを利用すれば、初期費用の負担を軽減できる場合があります。もし企業や自治体での導入を検討している場合は、募集している補助金制度を確認するのがおすすめです。
発電量が雨量に影響される
水力発電は水がエネルギー源であるため、雨量が少ないと発電できない恐れがあります。日本は比較的水資源に恵まれている国ですが、地域によっては雨量が少ないこともあるでしょう。
そのため、水力発電を導入する際には、設置場所の年間降水量などのデータを分析することが大切です。もし雨量の多い場所に設置すれば、安定して発電でき、その分の売電収入を得ることができます。
環境に悪影響を与える可能性がある
水力発電の導入にあたってダムを建設する場合、周辺の環境や生態系に悪影響を与える可能性があります。なぜなら、水生生物の生息地が奪われたり、移動が妨げられたりするからです。
また、環境だけではなく、周辺住民の移住が迫られることもあります。このようなデメリットから、ダムの建設に反対する運動も起きています。
日本の水力発電の現状
水力発電が日本国内の発電量に占める割合は7.1%であり、再生可能エネルギーの中では太陽光発電に次いで多い割合です。ちなみに、再生可能エネルギー全体の割合は22.7%となっています。(※2022年時点)
日本において、大規模なダムの建設はほとんど完了しています。そのため、現在注目されているのが、中小水力発電です。中小水力発電とは、一般的に10,000kW〜30,000kW以下の水力発電を指し、比較的設置しやすいのが特徴です。
この中小水力発電の普及により、政府は2030年までに水力発電の割合を11%まで引き上げることを掲げています。
参考:2022年の自然エネルギー電力の割合|環境エネルギー政策研究所、今後の再生可能エネルギー政策について|資源エネルギー庁
まとめ
この記事では、水力発電の仕組みやメリット・デメリット、日本の現状について解説しました。
水力発電のメリットは、温室効果ガスを排出せず、安定してエネルギーを供給できる点です。一方で、初期費用が高く、設置場所に配慮しなければならないデメリットがあります。
もし企業や自治体で再生可能エネルギーを導入するのであれば、水力発電もしくは初期費用を抑えられる太陽光発電を検討してみてはいかがでしょうか。